地域資源を活用し、新しい6次産業化を目指す。 スキルアップを目指し、実践者から学ぶ。
目次
- 東日本大震災の経験から生まれた復興常備食の考え
- イチゴ加工のこだわり
- 地方と都会を繋ぐ復興常備食
- 廃校活用による防災キッチンカーステーション
- 復興常備食から考える「備え」
(株)一生(サニーズファーム)(徳島県阿南市)代表取締役 北條 誠一
東日本大震災の経験から生まれた復興常備食の考え
私の実家は徳島県阿南市の米農家で、東京のJAの学校を卒業後病院で社会復帰の相談に乗るソーシャルワーカーの仕事をしていました。途中で転職しまして、赤十字でソーシャルワークをやっていました。その時に、心のケア班として東日本大震災の支援に行った経験があります。そこで目の当たりにした光景が現在の自分の活動に繋がっています。当時非常食がステージの上に山積みにされ、誰も管理できておらず、アレルギーの配慮なども全くない状況でした。無理して配給されたパンを食べて、アレルギー症状が悪化していく人などを目の当たりにしました。この時から非常食の選択肢として、オーガニックやグルテンフリーのものを作りたいとずっと思っていました。そこで実家の農業を事業継承した6年前に、有機農業に転換し、お米を使った復興常備食を作りました。復興常備食とは、長期保存可能な災害時にも利用できる日常食のことを指します。
「長期保存できる日常食」として、お米をお米のまま、青果を青果のまま保存するだけでなく、加工品なども長期保存し、ローリングストックで販売しながら備蓄していき、その仕組み作りまで考えました。色々な所で「これは非常食だろう」と言われながらも、「非常食じゃなくて、復興常備食です」と言い続けてきました。
イチゴ加工のこだわり
お米の他にもイチゴの栽培もしています。広告塔になる栽培品目として、一番メディアに取り上げてもらいやすい物はイチゴだろうと考えました。有機栽培の高設で農薬も使わないので、虫の被害など今も試行錯誤しながら取り組んでいます。単価をしっかり得るためにも、仲卸をせず直売にこだわることを重視しています。青果はスマート自動販売機と店頭での販売を半々で行っています。自動販売機は24時間営業で、風邪も引かないし、文句も言いません(笑)。完全キャッシュレスでクレジットカードをかざすだけで買うことができます。ただ、高齢のお客様などは戸惑うこともあります。それでも徐々にこういったものに販売手段を移行していくことで、人件費などの削減も考えていかないと、これからの農業は難しいと思います。
イチゴの加工ではまず冷凍しようと考えました。冷凍はテクニカンさんの急速冷凍機「凍眠(トウミン)」を使っています。緩慢冷凍だと細胞が壊れて水分が固まるのでかなり固くなりますが、この急速冷凍機を使うとシャーベット状で包丁の刃でスパッと切れるぐらいになります。そうするとスムージーなどの味が全く違います。また冷凍保存は、栄養素の吸収率が高まるというエビデンスもあるそうです。その他にもジャムとシロップを作っています。どちらも増粘剤など添加物等は使わず、イチゴと甜菜糖のみで作っています。健康のためにも甜菜糖にこだわっています。またキッチンカーで出しているスムージーでは牛乳の取り扱いが難しく、豆乳を利用しています。削りイチゴという商品も加工メニューの1つです。うちの農園の加工場の許可は惣菜製造業、アイスクリーム製造業、飲食店営業、冷凍食品製造業、鮮魚の5つを取っています。今ある商品全てを作るにはそれだけの許可が必要になりました。
私のキッチンカーは、宣伝用が目的の1つですが、現在日本キッチンカー経営審議会などで私は役職をもらっています。この役職は、農業の販売ルートを地方から東京へと確立していきたいとの考えから受けています。6次産業化は、作って加工してというところが注目されますが、作っても売れなければ意味がありません。だからこそ販路作りに私は力を入れています。またうちのキッチンカーは、災害が起きた時に一番初めに駆けつけられるように、四輪駆動の自衛隊で使われるようなタイヤをはかしています。能登半島には、合計で11回ほど復興常備食を持っていき、約1万食程を提供しました。
地方と都会を繋ぐ復興常備食
私が目指しているのは、一次産業と食文化を支えるという活動です。そこに生産地と消費地が連携した仕組みを作る、これが復興常備食の考え方です。地方と都会とが共に栄える仕組みであり、地方の農業が買い支えてもらうようなイメージです。
復興常備食は、地方で作って東京で売り備える仕組みとして、日本キッチンカー経営審議会という組織で全国的に広げています。東京では、地下鉄など主要駅には帰宅困難者の食事等を備えておく条例があります。ただここで備えているのは非常食です。非常食を皆さん普段から食べますか?能登半島に震災二週間後に行った際も、カレーと豚汁はNGが出ました。食べ過ぎてアレルギーになるほどだからです。だからこそ必要なのは日常食です。実際能登半島の支援では、復興常備食は高い評価を得ています。東日本大震災の時にも感じた、「日常食をストックする」ことの重要性、そのためにも売り備える仕組みを作る必要があります。
能登半島では魚を食べられていなかったので、「ハモっ天むす」をお持ちしました。これは地元の中学校とコラボしてできた商品です。子どもたちが自分たちが被災した時に食べたいもの、元気が出るのは鱧という事で、「ハモっ天むす」を考え出しました。その他にも地元のシラスを使った「こめっ粉シラスバーガー」も復興常備食の1つです。また、復興常備食にはオーガニック率をつけるようにしています。復興常備食のオーガニック率を上げて独自のルートでオーガニックを優遇していけるような新しい基準を設けていきたいと、日本キッチンカー経営審議会と一緒にその仕組みを広げていこうとしています。
復興常備食を作るサポート事業として、ジャパンバイオファームの有機農業の営農指導も用意しています。ジャパンバイオファームは有機農業のインストラクターも養成している企業で、農業技術も肥料や土地改良なども全てセットにしてサポートしてもらえます。加工品製造の面でも私を始めとした全国のキッチンカー協会のメンバーがサポートしていきます。栽培と加工と販路を全て一つにすることは、この復興常備食の仕組みの1つです。
廃校活用による防災キッチンカーステーション
各地方に復興常備食製造も含めた、拠点が必要になってくると考えて生み出したのが、防災キッチンカーステーション構想です。コンセプトは「いつもからもしもまでを支える」、です。これは廃校を活用した、キッチンカーを核とした多機能拠点です。全輪駆動キッチンカーはもとより多様な防災トイレ、お風呂、モジュールハウス、ガソリンとプロパンガス併用発電機、産業用ドローンの日常管理体制や自治体配備機器の平時運用事務局としての機能をもち、大規模な備蓄場所として広域支援拠点ストックヤードの役割も担います。また、復興常備食の加工場や地域イベント会場の運営としても利用できます。廃校は、全国の自治体の課題にもなっており、その場所を近隣の農家が共同で使えるという仕組みにしていきます。
廃校のある場所は都市化されていない所が多く、そこに復興常備食を作るという産業を生み出すことで地域の活性化も狙いにあります。農家が加工所を自費で作るイニシャルコストも抑えられます。設備を自治体に作ってもらいますが、その自治体にも地方はお金がありません。そこで国の「新しい地方経済・生活環境創生交付金」などの予算を利用していきます。すでに内閣府の方とも、防災キッチンカーステーションを地方に作りましょうということを話しています。ただ備えるとは言っても、「売り備える」のでこれは産業となります。3,000万食東京で売り備えることができれば、3,000万食のマーケットを地方が持つことができます。しかも冷凍すると数年持ちます。
防災力が高まって災害時に食べるものさえあれば、人は働けます。さらに被災しても復興常備食があれば非常食を食べずに、健康的な食事を取りながら過ごせます。災害が起きてから復興常備食を作ろうか、では間に合いません。日本キッチンカー経営審議会が豪雨災害の後、内閣府から依頼をもらって合計で20万食ぐらいを東京に運んでいます。そのうち1万食がうちの復興常備食です。一食あたりの金額は千円ぐらいです。これは災害ビジネスではなく、防災力を高めていくための農家の仕事だと考えれば適正だと思います。
復興常備食から考える「備え」
今後は、愛媛県の行政の方々には、東京と協定をして東京の自動販売機に愛媛県のものを置く、ということにぜひ協力していただきたいです。そうすれば、愛媛県のものが自動販売機で購入でき、東京にいる自分たちの子どもや孫が愛媛のものを食べられるようにもなります。防災組織の人達に自動販売機に商品を補充してもらい、卸し値で入れる事でその差益部分は防災組織の収益事業にも繋がります。
また自動販売機を学校に設置することが出来れば、添加物が入っていないものを食べられる環境を作り出せます。更にこの自動販売機は購入設定をすることが可能です。例えば18歳以下の子どもが買う場合に無料で一日三食まで購入できるというような制限をかけて販売し、その補助金を自治体が出すことで、子ども食堂のような活動が自動販売機でもできるようになります。子どもたちが食べる食事を地方の農家が作り出す、これが私が考える6次産業化です。
防災機能の向上、地域活性化と食文化の継承は今後、地方がやっていく必要があると考えています。なぜなら自分たちが被災した時に自分たちで復興する術を持っていないと、国はやってくれないからです。能登半島の震災を見てみてください。半年たっても落ちた車はそのまま、でこぼこ道だらけです。南海トラフが来ても同じようになるのではないでしょうか。だからこそ自分たちの備えを今作っていくことが重要です。災害時の二次災害はほとんどが人災だと思います。カップラーメンやレトルト食品を食べ続けたら、高血圧、糖尿病の人達の病気は悪化します。非常食では栄養管理ができません。それを予防するためには、食という環境をきっちり作る仕組みを作る必要があり、それを作るのは国の責任だと思います。この復興常備食を、今後の6次産業化の選択肢の一つに入れる事をぜひ受講生の皆さんには知っていただきたいです。
本事業の詳細についてはこちらをご覧ください。
受講生募集
6次産業化に関心のある皆様のご参加をお待ちしております! ぜひお知り合いの方にもお声がけください。
| 締切 | 各研修開催の3日前まで |
|---|---|
| 定員 | 各回20名程度(オンライン配信あり) |
| 会場 | テクノプラザ愛媛 研修室(松山市久米窪田町337-1) |
| 主催 | 愛媛県農林水産部農政企画局農政課 |
| 対象 | 県内農林漁業者・地域資源を活用した商品開発等に関わる方 |
お問い合わせ
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