目次
・LFP⁺ながの 課題検討会④を開催しました
・課題検討会④ 議事録
LFP⁺ながの 課題検討会④
~信州産小麦の需要拡大・生産拡大~を開催!
7月7日、「信州産小麦の利用と供給の拡大」をテーマに課題検討会を開催しました。これまでLFP⁺ながので進めてきた県産小麦の商品開発や学校給食での利用を振り返るとともに、製粉事業者や生産者、食品事業者などから、県産小麦の需要と供給の現状について話を伺いました。
県産小麦を使いたいという需要は着実に高まっている一方で、用途に適した品種の不足や生産コスト、品質の安定、農業機械への投資など、生産・供給面ではさまざまな課題があります。学校給食や観光、菓子、麺、パンなど幅広い需要を具体化し、その情報を生産現場へ伝えることで、需要拡大と生産拡大を結び付けていく方向性について議論しました。
課題検討会 議事録
(発言者敬称略)
1.開会
【発言】LFP⁺ながの事務局・(株)産直新聞社 毛賀澤明宏
今回の課題検討会では、「信州産小麦の需要拡大」と「栽培・供給の拡大」の両方を実現するための課題を検討する。
LFPでは令和5年度に信州産小麦をメインテーマとして取り上げ、県産小麦を利用した商品開発や紹介・評価イベントなどを実施した。翌年度以降も単年度で取り組みを終わらせず、県産小麦をサブテーマとして継続し、学校給食や地域のパン店、飲食店などでの利用につなげてきた。
一方、一度開発したものの継続販売に至っていない商品も多い。過去に開発した商品を再び生かすとともに、新たな商品開発を進め、県産小麦の需要拡大から生産拡大へつなげていきたいと説明した。
2.あいさつ
【発言】農林水産省 大臣官房新事業・食品産業部 川添英記氏
信州産小麦は長年にわたる地域課題の一つであり、新たな参加者も加わった今回の検討会から、新しいアイデアや連携が生まれることに期待を示した。
また、LFP⁺ながのでは複数のテーマ別課題検討会を先行して展開しており、地域の特色を打ち出した取り組みとして今後の展開に期待を寄せた。
3.経過報告
【発言】LFP⁺ながの事務局・(株)産直新聞社 毛賀澤明宏
令和5年度には「信州産小麦の消費拡大と生産の質的向上」を掲げ、おやきや菓子、パン、麺類など21種類の商品を開発。その後も、信州産小麦100%のおやきや土産菓子、デニッシュ、学校給食用パン、バタール、生パスタ、スコーンなど、さまざまな形で利用が続いている。
また、大規模な流通だけでなく、地域の農家が育てた小麦を地域で製粉し、地元のパン店や飲食店で利用する「小さなサプライチェーン」の構築にも取り組んできた。
JA全農長野からは、米価が高止まりする中で小麦の作付面積が減少しており、生産を維持するには、安心して作付けできる需要の確保と、生産コストに見合った価格が必要との意見が寄せられた。
特に、品質の高い小麦を生産するには追肥などのコストも必要になるため、単純な増産ではなく、需要と品質、価格を結び付けた生産体制を考える必要があるとの課題が共有された。
4.話題提供① 学校給食での100%信州産小麦利用
【発言】学校給食地産地消食育コーディネーター 杉木悦子氏
長野県の学校給食用パンは、県産小麦50%、北海道産小麦50%を基本としている。令和4年度から、県産小麦100%のパンを提供する取り組みを実施してきた。
県産小麦100%にすると1食当たり平均7円程度の価格差が生じるため、これまでは学校給食会が差額や試作費を負担しながら取り組みを進めてきた。
当初は給食でパンを食べることを中心にしていたが、その後は社会科や食育の授業と組み合わせ、小麦の生産や加工、地産地消について子どもたちが学んだ上で県産小麦のパンを食べる取り組みへ発展した。
本年度は木曽地域の王滝小学校で実施する計画で、学校内で調理員がパンを仕込み、焼き上げる。同校では食育計画の中に位置付け、子どもたち自身がパンづくりや県産小麦について学ぶ取り組みを検討している。
県内の学校給食関係者には県産小麦をさらに利用したいという意向があり、価格面などの条件が整えば、大きな需要先になる可能性があると指摘。学校給食を安定した「出口」とするとともに、子どもたちが地産地消や地域の農業について学ぶ食育の場として活用していく重要性を強調した。
5.話題提供② 信州産小麦の需要と供給の現状
【発言】柄木田製粉(株) 田部井氏
長野県では年間約6,000~7,000トンの小麦が生産されており、長野県製粉協会としては1万トン程度まで生産を増やしたいと考えている。しかし、小麦専業農家はほとんどおらず、農地減少や生産者の高齢化などもあり、簡単に生産量を増やせる状況ではないと説明した。
一方、近年は「長野県産小麦を使いたい」という問い合わせが増加。特におやき事業者では、消費者から「長野県産ではないのか」と尋ねられることをきっかけに、県産小麦への切り替えを検討する例も増えているという。
LFPの取り組みは短期間で成果が出るものではないが、2~3年継続する中で県産小麦への認知や需要の高まりが見えるようになってきたと報告した。
ただし、品種ごとの需給バランスには課題があり、需要のある用途へ年間を通じて安定した品質と量を提供できる体制は、まだ十分には整っていないとした。
自由討論
【発言】日穀製粉(株) 市川氏
県産小麦へのニーズは増加しており、特に菓子やうどん向けの引き合いが多い。一方で、長野県産小麦は品種が多く、用途ごとの生産量のバランスが取れていないことが大きな課題と指摘した。
今後さらに県産小麦の生産を増やしてほしいとの要望を示した。
【発言】柄木田製粉(株) 田部井氏
菓子向けでは「シュンヨウ」、うどん向けでは「ユメセイキ」などへの需要があるものの、十分な量を確保できていないと説明。
小規模な菓子店などへの供給は可能でも、利用が一気に拡大すると、年間を通じた安定供給が難しくなる場合があり、新規販売を断らざるを得ないケースもあるとした。
【発言】長野県農産物マーケティング室 竪谷氏
単に「小麦を増産してほしい」と生産者に求めるのではなく、「誰が、どのような用途で、どの程度必要としているのか」という需要側の情報を明確にすることが重要と指摘。
マーケットインの発想で具体的な需要を生産者へ還元できれば、生産者への働き掛けや品質向上にもつながるのではないかとの考えを示した。
【発言】(株)マツザワ 森本氏
土産菓子などで信州産小麦への切り替えを進めており、県内で販売する商品については「長野県産小麦使用」と表示していると紹介。
県産小麦は他産地の小麦に比べ価格が高いものの、地域への貢献という観点から利用している。供給量に応じて使用量を調整するなど、製粉事業者と相談しながら柔軟に対応していきたいとした。
【発言】農家 上條氏
生産者が新たに小麦栽培へ参入する上では、コンバインなど農業機械への初期投資が大きな負担になると指摘。
また、小麦は品質査定などによって価格が変わり、補助制度の条件によって収入にも大きな差が生じるため、生産者が安心して取り組める条件整備が必要との意見を述べた。
【発言】学校給食地産地消食育コーディネーター 杉木氏
松川町などでは、地域で生産した小麦を地元のパン店がパンに加工し、学校給食へ提供した事例があると紹介。
県全体の大きな流通だけでなく、「地域の小麦を地域で製粉し、地域のパン店が焼き、地域の子どもたちが食べる」という小規模な循環を各地でつくることも、地産地消や食育の観点から重要とした。
【発言】全国プラットフォーム事務局(船井総合研究所)伊藤氏
地域で栽培した小麦を小規模な事業者が製品化する取り組みは、長野県らしい特徴になり得ると評価。
全国事例として、地域の特色ある小麦を栽培・商品化する取り組みなども紹介し、長野県においても地域ごとの小さな循環づくりが今後のヒントになるとの考えを示した。
【発言】大福食品工業(株) 新井氏
過去のLFPの取り組みで、信州産小麦100%のパン粉を試作したことを紹介。
通常のパン粉より歩留まりが低く、コロッケ1個当たりの原材料費が5円以上高くなるなど価格面の課題はあるものの、県産小麦100%のパン粉を作ること自体は可能であることが確認できた。
全県的な大量使用でなくても、学校給食など限定的な場面から取り組むことは可能であり、相談があれば協力したいと述べた。
【発言】ホテルメトロポリタン長野 渡辺氏
ホテルでは一つの地域食材に焦点を当てた企画は来場者にも分かりやすく、信州産小麦をテーマにした企画についても検討できるとした。
製粉事業者からは、県産小麦を使ったパスタや麺、パン、菓子などさまざまな提案が可能との意見も出され、ホテルや飲食店を県産小麦の魅力を発信する場として活用していく可能性が示された。
小規模製粉と地域内循環について
議論では、大規模製粉と地域の小規模製粉では、製粉方法や粉の性質が異なることも話題となった。
大規模製粉ではふるい分けを重ね、加工しやすい部分を取り出すことができる一方、小規模製粉では皮に近い部分も含まれやすく、パンなどにした際に食感が異なる場合があるという。
こうした特徴を欠点として捉えるだけでなく、「地域で育て、地域で挽いた小麦ならではの味や食感」として価値化することで、大規模流通とは異なる商品づくりにつながる可能性があるとの意見が出された。
6.総括
【発言】農林水産省 川添氏
今回の議論では、信州産小麦への需要がある一方で、求められる品種や原料を安定して調達することが難しいという具体的な課題が明確になったと評価。
生産者の高齢化や農業機械への投資負担などに対しては、食品事業者による生産現場への支援や農業参入、農業機械の共同利用など、LFPのネットワークを活用して解決することも考えられると提案した。
また、全国のLFPで開発された商品の中には、商品化後に十分な販売につながらなかったものも多いことから、今後の商品開発では、原材料の安定調達、製造コスト、販売価格、販路、消費者が感じる付加価値などをあらかじめ考える「マーケットイン」の視点が重要と指摘した。
特に長野県では学校給食という安定した出口があり、食育を通じて県産小麦の価値を子どもたちへ伝えることが、将来の需要形成にもつながると評価。パンや麺、菓子など小麦の品種や用途の違いを学ぶ機会をつくるとともに、パスタやドーナツなど若い世代にも訴求できる商品開発にも期待を示した。
まとめ
今回の検討会では、信州産小麦を使いたいという需要が、学校給食、おやき、菓子、うどん、パン、パスタ、ホテル・飲食店など幅広い分野で高まっていることが確認されました。
一方、需要のある品種の不足、年間を通じた安定供給、生産コスト、品質、農業機械への投資、生産者の高齢化など、生産拡大に向けた課題も明らかになりました。
今後は、「県産小麦を増やす」という目標だけを掲げるのではなく、「どの品種を、誰が、何に、どのくらい使いたいのか」という具体的な需要を整理し、生産者へ伝えていくことが重要です。
また、製粉事業者を介した県内全体の大きなサプライチェーンを維持・拡大すると同時に、地域の生産者、製粉所、パン店、菓子店、飲食店、学校などを結ぶ小規模な地域循環も各地で育てていく方向性が示されました。
LFP⁺ながのでは、学校給食という安定した出口を生かしながら、観光や飲食、菓子、麺類など新たな需要を掘り起こし、商品開発やマッチングの場を増やすことで、信州産小麦の「需要拡大」と「生産・供給拡大」を両輪で進めていきます。
※10月20日に「テーマ別課題検討会⑦」を開催します。参加希望の方は、下記よりお申し込みください!
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