ランニングコストを大幅に抑え、促成・抑制栽培による高収益農業を実現した手法とは【愛媛県令和7年度 地域資源活用・地域連携(6次産業化)人材育成研修】

地域資源を活用し、新しい6次産業化を目指す。 スキルアップを目指し、実践者から学ぶ。

目次
  • ソーラーシェアリングを始める
  • 循環型原木椎茸栽培
  • ソーラーシェアリングの新たな可能性。陽性植物へ挑戦
  • 次世代IoT技術を利用した農業
  • アグリソーラーハウスについて

ネクストイノベーション(株)(岡山県玉野市) 大塚 健夫

ソーラーシェアリングを始める

 私たち株式会社ネクストイノベーションでは、アグリソーラーハウスという閉鎖型・施設園芸型のビニールハウスと太陽光発電所を同施設に設置するという新しいソーラーハウスを取り扱っております。これは「ソーラーシェアリング」という考え方に基づいており、農地の上部に太陽光発電設備を設置し、発電と農業を同時に行うことで、土地の有効活用と収益性向上を図ることが可能になる、という考え方です。ソーラーシェアリングの起源は、2004年に千葉県の長島彬さんという方が仕組みを提唱しました。長島さんの提唱したものは、農地の上に棚を作り短冊型の太陽光パネルを設置したオープン型です。当社では閉鎖型を目指し、施設園芸用のハウスに代わるソーラーシェアリングシステムを製作することで、発電と農作物栽培の効率化を両立させて、計画的に作物を栽培していくことを目指しました。
 実際にどんな作物ができるのか、エビデンスが無い中で原木椎茸を栽培する事から始めました。椎茸は基本的に日光を必要とせず、ソーラーシェアリングのデメリットである陰の影響が極力少ないと考えたからでした。ソーラーハウスを建てる許可を得るために、地元の農林課など色々と掛け合いましたが、「そんな所で作れるわけがない」と、当時許可は下りず、初年度はハウスを建てることは叶いませんでした。そこでもうすでに当社で所有していた太陽光発電所を使い、その周りを囲って簡易的なものを製作し、この中で原木椎茸の栽培を始めました。結果何の問題もなく栽培でき、これが当社で始めたソーラーシェアリングの第一歩となりました。この椎茸には、マルハチ椎茸という名前をつけて現在も栽培しています。

循環型原木椎茸栽培

 このマルハチ椎茸は大きく厚みがあることが特徴で、平均は直径が8cmほど、中には直径10㎝~12㎝、厚みが5㎝以上のジャンボと言われるサイズのものも出来上がります。栽培では循環型にこだわりました。最初に里山からほだぎをとりますが、昔は薪を得るために利用した里山は、今では放置状態で鬱蒼としている場所が全国的にほとんどだと思います。この里山で、椎茸のほだぎとなる落葉広葉樹を自分達で全伐して用意します。里山を全伐して、一旦丸裸にし、広葉樹の苗を新たに植えると、大体10年~15年後にはほだぎに使えるようなサイズまで育ちます。その繰り返しを循環型と呼んでいます。こうすることで鬱蒼とした里山が10年毎に生き返ります。熊なども含めた鳥獣被害も里山が蘇れば、軽減するようになると考えています。
 また、商品価値として原木椎茸は菌床椎茸が多い中で珍しくもあります。基本的に原木椎茸はほとんどが乾燥椎茸として販売されるので、生椎茸で売ることでも市場価値が生まれます。2017年から椎茸栽培は始めたのですが、形にするのに3、4年かかりました。そこからさらに、認定農業者の資格取得や乾燥椎茸の商品制作なども着手しました。さらに、里山に苗木を植える際に、国産トリュフを植えるという試みにも挑戦しています。苗木の中にトリュフ菌を共生させた、トリュフ菌共生苗木という苗木を植えることで、里山をトリュフが採れる山に変えられると言われており、現在農研機構でもこの取り組みを進めています。やり始めてまだ数年ですが、農業的にも面白い取り組みになりそうです。

ソーラーシェアリングの新たな可能性。陽性植物へ挑戦

 約4年ほどで、原木椎茸がソーラーシェアリングの下で栽培できるということは実証できました。次は陰性植物ではなく陽性植物に挑戦するため、選択したのはイチジクでした。イチジクは果樹の中でも最も日照量を必要としない植物で、日本で栽培できる品種が100種類ぐらいあります。ただ、今の日本では桝井ドーフィンと蓬莱種という2品種が全体の90%を占めます。そのため残りの98品種は残り10%の中にあり、生果で食べるか、加工にするかなど、バリエーションも幅広く、多様性を感じたのもイチジクを選択した理由です。
 栽培検証では、①露地②ビニールハウスの施設園芸③遮光率30%のソーラーシェアリングの施設園芸の3パターンで栽培をしました。全て同じ品種で、苗も自社で育苗し、苗が検証結果に影響しないように配慮しました。3つの農場での栽培の結果、30%の遮光率であれば味も色つきも大きな差がなく栽培できることがわかりました。また、露地と比べて施設園芸の方が雨が当たらないため品質が良く、防除における病害虫農薬の回数が減らせるメリットもあると感じました。
 イチジクは大体一反で3百万円ぐらいの収益になると思いますが、イチジク栽培には輸送性の悪さと棚持ちの悪さのデメリットがあります。この輸送性の悪さのデメリットを逆手にとって、都市部近郊にイチジク農地を持ってきてほしい、という大手スーパーさんからの話もあり、新たなビジネスチャンスも生まれています。

次世代IoT技術を利用した農業

 農業は、成果が出るまでに時間がかかり、長年の経験や勘、独自のノウハウが不可欠な高度な技術職だと思います。けれど、技術継承の難しさから、産地の衰退といった深刻な問題に直面しているように思います。その課題を解決する1つに農業IoTシステムがあります。バルブを閉める、ハウスサイドの開閉といった作業は、当然ながら現場に行く必要があります。これをIoTを使ってスマホなどから行うことで圃場に行く手間が省けます。またIoT技術の1つであるセンシング技術は、圃場のデータを24時間365日集め、サーバー上にデータとして保管できる技術です。年単位でのデータ比較が可能になり、最近はAIと組み合わせて、省力化+農業技術補助のようになってきており、今後はより発展していくと思います。
 もう1つご紹介したいのが、アグリコンテナです。家庭用プランターの大型版に暗渠管理と根域制限ができる機能を搭載しました。大体1mで200ℓぐらいの土が入ります。土中に埋めても、地上に置いてもどこでも利用可能です。このコンテナの最大の特徴は土壌の温度環境を制御できることです。内部にあるパイプの隣にチラーを置いて冷水と温水を流し、土壌の温度環境を制御します。近年の過酷な夏場の環境下でも、このコンテナを根域だけで絞って管理すれば温度管理が可能になります。植物のセンサーは、上部よりも根の方に多いので、根域を制御して管理すればどんな作物でも栽培可能です。こういった技術を使ってこれからの施設園芸は、自家消費+統合環境制御がキーになると思います。ソーラーシェアリングで作った電気を下の農業スペースで自家消費をし、そこにIoT技術など施設全体を含めた統合環境制御をして栽培をしていく。そうすることで、作物にとっても人間にとってもより省力化ができ、過ごしやすい環境が整うようになるのではないでしょうか。

アグリソーラーハウスについて

 農業において、夏場の高温問題と冬場の暖房コストの高騰は大きな課題です。当社のソーラーシェアリングのアグリソーラーハウスはこの2つの問題にも対応できます。施設園芸型であるアグリソーラーハウスには以下の4つのメリットがあります。1つ目は、法的、制度的な審査への適合性です。行政判断が適応しやすく、特に共同基準などの問題において、ソーラーシェアリングの基準というものがあり、普通の施設園芸よりも強度が高い設定で風雨台風にも強いと言えます。2つ目に地域との共生が前提の設計であることです。当社のハウスは、太陽光パネルはありますが、横から見るとほぼビニールハウスにしか見えないので、景観的にもオープン型より馴染むように思います。地域の外観との共生は重要な視点です。3つ目に、実際の販売と導入のしやすさです。今までの施設園芸の鉄骨ハウスに比べれば安価であり、当社が直接販売をするため中抜きが少ないことが理由にあります。4つ目に営農継続の安全性です。そもそもソーラーシェアリングは、営農の継続が大前提で、営農の継続ができない場合は、設備自体が撤去命令となります。  また、当社のアグリソーラーハウスには売電型と自家消費型の2種類があります。売電型の遮光率は30%か、陰性植物の場合50%の遮光率の設定ができます。売電型の場合、発電事業者さんが売電にて収益を得、その売電型のソーラーシェアリングの下で農業者が農業をします。これにより農業者はイニシャルコストなしで施設を使えるようになる、といったモデルとなっています。ただこの場合は、発電も重視するため、農作物の日射条件があまりよくないことがデメリットです。
 対して自家消費型の遮光率は18%~30%です。上部の太陽光パネルで作った電気を、農作業の際に自家消費で使います。これによって、年間で150万円~200万円程の電気代が節約でき、施設の冷暖房にも利用できます。売電型との大きな違いは、パネルを東西に配置すること、そしてPOフィルムの屋根の下に太陽熱パネルを設置することです。発電としての効率は落ちますが、逆にPOフィルムの張り替えが必要な際に邪魔にならないことを考えてこの形にしています。また、直射日光は、一日の間に必ずどこかの時間に当たる設計になっています。自家消費型であることで、電気代がかからないため、ヒートポンプなどを使って快適な栽培環境が組めます。真夏の日中は難しいですが、24時間、365日、ある一定の温度で保たれるような温度が設定できます。作物に優しい環境なので、当然ながら人間にも優しい環境になっています。収穫量、品質、コストへの効果も期待できます。施設園芸なので露地に比べると品質がいいものができます。収穫量では、内部の温度環境を制御することによって、時期をずらして栽培、収穫が可能になります。これにより、市場価格が高い時期に出すことで、高価格の取引ができます。環境管理をすることで、結果的に収益が上がりコストが削減できます。

本事業の詳細についてはこちらをご覧ください。

令和7年度地域資源活用・地域連携(6次産業化)人材育成研修

受講生募集

6次産業化に関心のある皆様のご参加をお待ちしております! ぜひお知り合いの方にもお声がけください。

締切 各研修開催の3日前まで
定員 各回20名程度(オンライン配信あり)
会場 テクノプラザ愛媛 研修室(松山市久米窪田町337-1)
主催 愛媛県農林水産部農政企画局農政課
対象 県内農林漁業者・地域資源を活用した商品開発等に関わる方

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お問い合わせ

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