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【特集 LFP】農水省の新プロジェクト〝LFP〟 地域に持続可能なビジネスモデルを

目の前に広がる畑に仕事をする農家さん2人

農林水産省が令和3(2021)年度に立ち上げた「地域食農連携プロジェクト」。Local Food Projectの頭文字を取り、「LFP(エルエフピー)」と呼ばれる。食に関わる地域の事業者たちを中核とし、持続可能なビジネスモデルの創出を目指す、その概要を紹介する。

目的と理念を大切に

LFP事業のイメージLFP事業のイメージ

LFPの実施主体となるのは都道府県だ。令和3年度は22道府県が参加している。あらゆるジャンルの事業者が集まるプラットフォームを形成し、地域の課題意識に沿ってテーマを設定。プラットフォーム参加者は「LFPパートナー」と呼ばれ、各1~2回の研修会と戦略会議を経て、単年プロジェクトとして新商品・新サービスの開発に当たる。

LFPパートナーとして想定されるのは、農林漁業者、食品卸・小売業者、外食・中食業者、観光事業者、直売所・スーパー、金融機関、メディア、大学・研究機関等々。ジャンルは食・農に限定せず、さまざまな業種から迎え入れる点が特徴的で、これにより、異業種の技術・知見の融合による「イノベーションの創発」と、消費者ニーズの変化に対応した「バリューチェーンとサプライチェーンの構築」を目指している。

一次産業ではなじみの薄い言葉がすでにいくつか出てきているが、LFPには大切なキーワードがある。中でも特に重要で、プロジェクトの中心的な考え方となっているのが、「社会的課題解決と経済的利益の両立」だ。つまりは、「事業者の側が持っている素材や資源から何ができるのかを考える」のではなく、「社会の側がどんな商品やサービスを求めているかを考えて事業計画を練る」ということ。これは、地域に持続可能なビジネスモデルを生み出すというLFPの目的を実現する上で欠かせない考え方だが、そのためにはプラットフォームに参加するLFPパートナーがこれについて十分理解しなければならない。そのためLFPでは、実際のプロジェクト内容を検討する前に研修会を開催し、パートナー間の共通理解の醸成に努めてきた。取り組みの目的や理念を重視することそれ自体が、LFPの特徴的なポイントでもある。

社会的課題の解決とは

試飲する数人の男女

ここで、「社会的課題解決と経済的利益の両立」とは一体何を指すのか、もう少し掘り下げてみる。農水省からの委託で都道府県のLFPの取り組みを支援する中央LFP事務局が具体例として挙げているのが、酵母入りのクリームビスケット「ビスコ」だ。ビスコが誕生したのは、1933(昭和8)年。製造元の公式ホームページによると、子どもたちの健やかな成長を願い、当時栄養効果が注目されていた酵母入りのお菓子として商品化したという。その後も、ビタミン、カルシウム、乳酸菌など栄養成分を強化。変化する消費者ニーズに対応すべく改良を重ねて、80年以上経った今も不動の人気商品の座を守っている。

もう一つ、中央LFP事務局が引き合いに出す事例が、青果物の新しい物流の仕組みとして注目されている「やさいバス」の取り組みだ。購入者は欲しい商品をネットで手軽に注文でき、商品の出荷・受取場所にバス停を利用することで物流コストを抑えている。ネットを介して購入者と生産者がやりとりできるためミスマッチを防ぐことができ、両者にとってメリットがあるとされる。地産地消の拡大につながる新物流システムとの期待もあり、各地に広がり始めているという。
つまり、これらの商品・サービスが生まれた背景にも「社会的課題」があったというわけだ。社会的課題に対応した商品・サービスを開発することは、顧客のニーズに応えることでもあり、自ずとビジネスチャンスになる。

地域が主役の支援体制

みやざき食農連携プロジェクトプラットフォーム設立式

ただし、ひと口に社会的課題と言っても、同業内の課題から地域内の課題、地域外(国内レベル、国際レベル)の課題までさまざまで、対象とするフィールドによって課題設定の仕方は変わってくる。業種を越えたつながりの中で展開していくLFPでは、より広い視点で物事を捉えるべき状況が想定される。そこで中央LFP事務局は、事業戦略立案の助言役となる「コーディネーター」を、地域の取り組み内容に合わせて派遣している。

コーディネーターは21人いて、いずれも中央LFP事務局が選任した面々。商品開発や販路形成などにおいて経験豊富で、インバウンド誘客が得意だったり、ワークショップ手法に精通していたりと、それぞれに強みを持っている。地域での議論が行き詰った時、中央は地域からの要請を受け、状況を打開するための適切な人材を派遣する。あくまで地域が主役であり、地域を中央が後方支援するという構図が明確になっている。

あらためて両者の役割を整理すると、次のようになる。地域は、農林漁業者を含むさまざまな企業・団体から成るプラットフォームを作り、令和3年度に取り組む間接補助事業(※)の戦略を作成し、それに基づき実行する。中央は、プラットフォーム構築、戦略の検討、事業の推進をそれぞれサポートし、コーディネーターの派遣調整と、事業実施に伴うクラウドファンディング活用などの支援を行う。

出口にクラウドファンディング

初年度は単年プロジェクトの計画から実行までを行う予定だ。新商品の開発に向け、試作品製造、デザイン、市場評価、販売促進まで一通り行う。間接補助額の上限は400万円で、都道府県1つにあたり1件のみ。農林漁業者、食品加工事業者、流通・販売事業者のそれぞれ1者以上を含む3者以上の事業者が参加することが条件となっている。

中央LFP事務局ではクラウドファンディング大手の「Makuake(マクアケ)」と協力し、クラウドファンディングの利用を推奨している。マクアケとは新商品もしくは新サービスだけに特化したクラウドファンディングサービスで、「応援購入」という形で利用者に資金提供を募ることができる。間接補助事業として取り組むプロジェクトは、計画段階でKPI(重要業績評価指標)を設定するが、クラウドファンディングは、その実現可能性を測るためのテストマーケティング的役割を果たすことが期待されている。間接補助事業に選ばれた取り組みは、マクアケの公式サイト内のLFP専用ページに掲載され、一体的にPRすることができる。

先行する地域の取り組み

最後に取り組みが進んでいる18府県について、どのようなプロジェクトが間接補助事業に選定されようとしているか、令和3年度の計画を紹介しよう。

〈秋田県〉
タマネギやマダイ等を原料にした業務用商材となる一次・二次加工品の新商品開発と販路開拓を実施

〈岩手県〉
生産者と加工事業者等が協働し、果実・めん羊等を活用した加工品・メニューの開発や体験ツーリズムの構築

羊写真提供:岩手県
羊の人形写真提供:岩手県

〈埼玉県〉
生姜をはじめとした地域の農産物を用いて味のバリエーション豊富な発酵炭酸飲料を開発

〈静岡県〉
県認証ブランド食材の生産者と加工食品メーカーが協力し、地元の食材をミールキットとして提供

〈長野県〉
キノコ生産者を中心に県内加工、販売事業者が連携し、エノキタケの商品特性を生かしたメンチカツなどを開発

〈新潟県〉
酪農家や酒造会社等が連携し、地域独自の乳酸菌発酵酒粕(さかすけ)を使用したアイスクリーム等を開発・販売

〈富山県〉
果物のペースト等の幼児食や、市内外の菓子店等による一次加工品を活用した晴れの日のご褒美スイーツを開発

〈岐阜県〉
生産者、加工食品メーカーが果樹や野菜のペーストを開発し、NPO法人が中心となって子育てが楽しくなる幼児食を企画

〈三重県〉
オリーブのまちづくりに向け、オリーブ関連商品の開発や未利用部分・廃棄物などの資源化を検討

〈京都府〉
京の食文化を背景とした京都の料亭等による京都ならではの新たな家庭向け商品の開発・販売

〈大阪府〉
府民の健康増進を図るため、大阪産農林水産物(大阪産(もん))の機能性関与成分等を活用した新商品を開発

〈奈良県〉
耕作放棄地の解消や地域経済の活性化のため、地域の生産者、流通業者等が連携し、柿ワイン(果実酒)を開発

〈岡山県〉
県が育成した「岡山甘栗」の生産者と菓子業者等が連携して、甘栗を使用したプレミアム商品を開発

〈山口県〉
長門市において、伝統的かつ希少性のある白オクラ、「長門ゆずきち」を活用した飲食店メニューを開発

〈香川県〉
菓子製造業者、食品製造業者及びJAが連携して、県産小麦「さぬきの夢」と希少糖を使用した和洋菓子を開発

〈福岡県〉
地域の加工業者が県育成品種イチジク「とよみつひめ」の菓子等の加工品を開発し、試験研究機関等が高品質化を図る

〈宮崎県〉
オーガニックの町「綾町」の有機野菜を使用した多種多様な加工食品を環境や健康意識の高い消費者向けに開発

にんじん写真提供:宮崎県
にんじんの料理写真提供:宮崎県

〈鹿児島県〉
さつまいもの基腐病に強い品種の需要の安定化のため、コロナ禍における新しい生活様式に対応した、加工品(菓子類)の新商品を開発

※この記事は「産直コペルvol.51(2022年1月号)」に掲載されたものです。

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。