地域づくり

【あいきびと通信ー若者による新たな地域づくりの挑戦(第3回)】 運営メンバーが若者だからこその難しさ

あいきびと 代表 安藤あかり

長野県南佐久郡北相木村で、村内外の交流を促して地域の活性化を目指す団体「あいきびと」。その代表を務める同村出身の安藤あかりさんは、札幌と北相木村を行き来しながら、仲間とともにあいきびとの活動に取り組んでいる。そんな安藤さんが、活動を通じて感じ考え、実践している“新しいかたちの地域づくり”について伝える本連載。あいきびとの大きな特徴は運営メンバーが若者で構成されていることだが、それだからこその運営上の課題について、今号では考える(編集部)

活動が増えるにつれて、本業への負担が増す

地元の子供たちとのイベントの様子。
普段地域にいない若者の存在が目を引き、地域の方からも声をかけてもらえるようになってきた

最初、発起人の筆者と小学校時代の同級生の2人ではじめた「あいきびと」であるが、この3年の間に多くの若者が全国から集まり、メンバーは60人を超えるようになっていた。本格的な運営メンバーとしてやっていきたいと言ってくれる人も増え、周りからは順調だと見られていたと思う。

しかし、そんなある日。始めたてのゼロから一緒にプログラムを作ってきた初期メンバーが、ふとこぼした。

「このままだったら、あいきびとの活動に参加し続けていくのがきつい」

あいきびとの運営メンバーのほとんどは、仕事などの社会人経験がなく、この運営自体を自分の経験にし、地域と関わる暮らしを実現したいという想いだけで参加している。仕事というよりボランティアやサークル活動のようなイメージが正しいだろう。「続けていくのがきつい」とこぼした初期メンバーもそのような意識で参加していたが、あいきびとの活動が拡大するにつれ、本業との両立が難しくなってきたのだった。

メンバーが増えるにつれ、キャンプなどの実施回数が増えた。また、地域の方々から認知していただくにつれ、声をかけていただき、子供たちとのイベントを地域と共同で開催することも増えた。

さらに、あいきびとで畑も始めた。種まきだけでなく、日々の草刈り、収穫の管理など様々な作業が発生する。一番大変な耕耘や畝たて、植え付けなどの作業は、あいきびとのキャンプに組み込み、参加者が体験的に畑の作業を行うことをプログラムに入れることで、畑作業に掛かる労力を分散化する仕組みを作った。だが、日常的な水やりや草刈りといった管理作業は、あいきびとメンバーで行うしかなかった。

イベント中の参加者の様子。参加者もご飯をつくったり、食器を洗ったりし、一緒にイベントをつくり上げている

活動が増えることはもちろん嬉しいが、ほぼボランティアのように活動してくれている運営メンバーに大きな負担が掛かった。メンバーの多くは、大学生や会社員、個人事業主など、基本的に他にもメインの肩書を持ちつつ、あいきびとに参加してくれている。そのため、卒論の作成時期や仕事の繁忙期などに重なるなどし、活動がなかなか難しいメンバーももちろん出てくる。

あいきびとのコンセプトは「運営メンバーに限らず、参加者みんなで作り手になろう」である。だが一方で、「仕事でも遊びでもない形での地域貢献と暮らしの体験を提供する」という方針も掲げている。活動に積極的に関わっていってほしいが、参加者の仕事や私生活の都合に大いに影響を受ける。こうした点に、運営上の難しさを非常に感じていた。

どこまで過疎地域に関わってもらうのか

地域の伝統行事に参加した時の様子。行事を手伝う中で地域の人との距離の近さを肌で感じる機会になっている

若者が、あいきびとに関わっている理由を改めて整理すると、次のようなものが多いと思う。

●田舎に「都市とは違う人との距離感 (人との関わりの深さ)」の魅力を感じているから

●都市から離れて自然を感じたいから

●あいきびとにいる人に魅力を感じているから

たしかに、こうした過疎地域の田舎ならではの魅力を感じているのだと思う。だが一方で、特に20代の若者はまだそれほど社会経験を積んでいるわけでもないため、「もっと色々なところに飛び込んで経験を積んで学びたい」と考えている人も多い。

そのため、私はあいきびとの活動の理想形を、運営メンバーの若者が「自分の活動が田舎の誰かにとっての助けになり、かつ自分の学びにもなる」と思えるものだと考えている。地域にとっても若者にとってもWin-Winということだ。一方で、私はあいきびとが運営メンバーに対し経済面で少しでも貢献できるようにしたいと考えており、利益を出せる団体になりたいとも思う。これらのバランスについては、現在模索中である。メンバーの若者に過疎地域にどこまで関わってもらうようにするのが、私たちと若者のお互いにとってベストなのか、これからも現場で模索し続けていきたい。

次回は、この過疎地域に飛び込んで移住を決めた20代のあいきびとメンバーについて、お伝えしようと思う。

筆者紹介

安藤あかり

あいきびと代表。2000年生まれ。長野県北相木村出身。北海道大学農学部在学中に日本全国海外を巡り地域づくりの現場を見る。2021年から長野県で学生×過疎地域に着目し、合宿イベントを多数開催。長野県での活動を継続しながら北海道に戻り、主に学生の起業家教育に携わる。現在北海道と長野県で学生と地域とスモールビジネスをキーワードに一人ひとりが主役になる地域社会を生み出せないか模索中。趣味はロードバイクと料理。