農と食

【直売所に向けた野菜作り】自然災害に対する考え

有限会社コスモファーム 代表取締役 中村敏樹

度重なる台風被害

千葉県での農業被害は427億円に達しその被害はまだ拡大しそうです。これだけの被害があると、もともと脆弱な産業である農業は立ち直れない状況になってしまいます。特に今回の農業被害は施設園芸に大きなダメージを与えました。水稲は既に刈り取りも終わりさほどの被害もありませんでしたが、風台風の15号では施設の倒壊や停電・断水などによる二次的被害がかなり深刻な状況にあります。施設園芸や畜産などを営む農家はほぼ専業です。農業に夢と希望を持って取り組んできた農家が一番のダメージを受けていることに心を痛めます。19号・21号は雨台風……栃木県・茨城県・福島県・長野県など広い範囲で河川の氾濫などを起こし、尊い人命・家屋の倒壊や田畑の流失、農業機械の浸水!今後農業を続ける為に必要なインフラを奪ってしまいました。

今後もこのような災害が起こらないとは言えません。50年に一度の大雨が……と言いながら10月には毎週のように台風や大雨が関東を襲い被災地にもさらなる大きな被害をもたらしています。

被害への対処は足を運ぶこと

私の畑も千葉県長生郡睦沢町にあります。今回の台風や大雨で3回程畑が水に浸かりかなりの被害が出ています。9月は大根やカブ・ホウレンソウなどの種蒔き時期、白菜やカリフラワーの定植時期。昔からこの時期を外すわけにはいきません。10月は一年のうちで一番気候が安定し晴天日が多いとされてきました。しかし、今後はそのようなことも言えなくなってきます。雨に叩かれ土が締り、根が酸欠状態になります。台風の強風に揉まれ野菜にキズが付き病気が発生します。生育が弱くなると害虫も発生してきます。大豆は水に浸かり収穫前に発芽してきます。

対処を怠るとその年はアウトです。少しでも被害を抑えるには殺菌剤・殺虫剤・中耕除草、そして種の播き直しが必要になります。諦めずに行動する!!次の種を播く!!どんな肥料より畑に足を運ぶことが一番の肥やし!!

今後も大規模農業でいくのか

では今回の災害を機にどのような農業を考えたらいいのでしょうか? 自然災害だけでなく今までの稲作中心農業が成り立たなくなり、どのようにしたらいいのかその対応が求められています。 

日本農業は戦後、農協を通じ市場流通を中心に組み立てられてきました。流通効率だけを考え、いかに小売業が売りやすい物を供給するかが一番でした。そのために農産物に細かな規格を作り、また産地間競争を煽り、大量消費を目的に品種改良も行われてきました。どこの産地でも青首大根、ニンジンは五寸人参、キャベツにブロッコリー……それが説明もいらない大量消費野菜ということのようです。主要14品目(指定野菜)の野菜を中心に産地づくりが行われ、小さな産地や農家では今の流通に勝てないようになってしまいました。農業も高齢化し65歳以上の割合が中心になっています。新規就農者もいますが、農業で成功を収めるのは簡単なことではありません。今回の自然災害に対し政府は出来る限りの応援をすると言ってはいます。「借入金利をなくす」でも、それも借金です。自分の代で返せる見込みがあれば借り入れもいいかもしれません。しかし、孫や子の代まで借金が残るようなことはできません。

これから新たにハウスを建てる!これから新たに農業機械を買う!これから新たにリンゴなどの樹を植えなおす!……長い年月を掛けその設備投資をしてきたものが一偏に資金が必要になり、生活に圧し掛かってきます。  これからの農業は台風に強い施設を作り、大規模に……これではきっときりがないように思います。日本農業はきめの細かな農業こそが大切ではないでしょうか。

農業スタイルを考え直す

農業スタイルや栽培作物を根本的に考えなおす時期なのかもしれません。一年に一度しか収穫できない物を作るとそのリスクは大きくなります。栽培期間の長いものも同じでしょう。

農業が何故儲からないのか?それは収穫までの期間が長いこと!そしてその栽培期間中は収入が見込めないこと!

その栽培期間に災害が発生すると一年あるいはそれ以上の期間収入が無くなってしまいます。サラリーマンでもアルバイトでも毎月収入がありますが農業の多くはそうではなかった!これはやっぱり生活する上ではかなりリスクがあるように感じます。

小さな農家であれば30〜50アールの面積で多品目少量の野菜を栽培し、毎日出荷できる体制を作る!毎日出荷できれば必ず収入が増えます。残り面積は水田でも構わないし単品の野菜でも構いません。毎週種播きをし、野菜の出荷に切れ目を作らないこと!出荷先は出来るだけ産地に近いところで顔が見える流通をすること!この農業を繰り返していけば設備投資もほぼいりません。そのかわり手間をかけること!これが災害に強く持続可能な農業スタイルではないでしょうか。

中村敏樹さん(有限会社コスモファーム 代表取締役)

長野県上田市の水稲・養蚕農家に生まれ、香川大学農学部卒業後、農産物生産指導、流通コーディネートなどを30年以上手がける。

※この記事は「産直コペルvol.39(2020年1月号)」に掲載されたものです。

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。