特集

【特集 種】種苗法を知ろう 農水省Q&A

アンケートで様々な意見が寄せられた種苗法。法改正に期待を寄せる声もあれば、不安視する声もあった。ただ、不安視する声の一部は、誤解から生じていると思われるものもあった。

このページでは、そもそも種苗法改正によって何が変わるのかという点と、法改正を危惧する意見や疑問点について、可能な限り解説したい。農水省のホームページにすでに掲載されている情報に加え、編集部による農水省食料産業局知的財産課への取材で答えてもらったことを合わせてQ&A方式で掲載する。

【用語解説】

●登録品種……育成者が種苗を品種登録したもの。育成者権の存続期間は25年(木本性の植物については30年)と定められている。
●一般品種……在来種や、品種登録されたことのない品種、品種登録期間が切れた品種。

[参 考]
農水省HP:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html

種苗法の一部を改正する法律案概要:https://www.maff.go.jp/j/law/bill/201/index.html

Q1 なぜ種苗法を改正するのですか?

日本で開発された優良品種が海外に流出し、第三国に輸出・産地化されるのを防ぐためです。

Q2 種苗法改正によって何が変わるのですか?

主な改正事項として、
①品種の開発者が輸出先国または栽培地域を指定できるようになります(図1)。利用条件に反して海外などへ種苗を持ち出した場合には育成者権の侵害となります。
②農業者の登録品種の自家増殖にも育成者権の効力(禁止ではなく許諾が必要となる)が及ぶようになります(図2)
③質の高い品種登録審査のために出願者から審査の実費相当額を徴収すると共に、出願料及び登録料の水準を引き下げます。
④育成者権を活用しやすくするための措置として、侵害立証を行いやすくする制度を設けます。

種苗法改正案の主な改正事項①図1:種苗法改正案の主な改正事項①
図2:種苗法改正案の主な改正事項②

Q3 自家増殖は一律禁止になりますか?

なりません。現在利用されているほとんどの品種は一般品種であり、今後も自由に自家増殖ができます。改正案で自家増殖に許諾が必要となるのは、国や県の試験場などが年月と費用をかけて開発し、登録された登録品種のみです。そのような登録品種でも許諾を受ければ自家増殖ができます。

弊誌のアンケートで「自家採種が禁じられてしまう」と危惧する声もあったが、一般品種については対象外となるため心配し過ぎる必要はないようだ。また、「地域の伝統野菜の継承が難しくなる」といった声もあったが、伝統野菜についても(ごく一部の登録品種をのぞき)種苗法の対象外だ。

Q4 自家増殖に許諾が必要となると、農家の生産コストや負担が増えて支障が出ませんか?

現在利用されているほとんどの品種は一般品種のため、許諾も許諾料も必要ありません。また、新品種に関しても農業者に利用してもらわなければ意味がないので、農業者の利用が進まない許諾料となることは考えられません。なお、登録品種の自家増殖の許諾手続きは、農業者の事務負担が増えないように、団体がまとめて受けることもできます。

Q5 今回の法改正で家庭菜園(販売、譲渡を行わない場合)での利用に影響はありますか?

今回の法改正は、自家消費を目的とする家庭菜園や趣味としての利用に影響はありません。

Q6 優良品種の海外流出を防止するには、海外で品種登録するしか方法がないのではないですか?

農林水産省では品種流出のリスクが高い国における品種登録を支援し、海外での無断栽培の防止等を図ってきました。一方で、現在の種苗法では、登録品種であっても正規に購入した種苗であれば、購入者が海外に持ち出すことは合法で、止めることはできません。
このため、海外での品種登録に加え、国内法でも登録品種の海外への持ち出しについてきちんと対応できるようにする必要があります。

Q7 在来種を自家増殖している農業者が近隣の登録品種の花粉が交雑した種を採った場合でも、登録品種の権利者から訴えられるようになるのですか?

種苗法及び種苗法改正法案で登録品種に権利が及ぶのは、登録品種とすべての特性が同じ場合です。農業者が栽培している在来種に登録品種の花粉が交雑して採れる種は、一般に登録品種と全ての特性が同じにはならないため、登録品種の権利は及びません。

図3−1:既存品種が大企業等に勝手に品種登録されてしまうとの誤解
図3ー2:強制的に特定の登録品種の利用を強要されるとの誤解

アンケートでは、種苗会社の独占や、全国一律の種子になってしまうのでは、と不安視する声もあったが、こうした声は「誤解」であると、上記の通り農水省からは発信されている。

改正案が反対される理由として、「自家採種の禁止」という声を最もよく聞く。繰り返しになるが、自家採種が禁止されるのは登録品種に限っての話で、ほとんどの登録品種がF1種という今、これについて大部分の農家には大きな影響がないといえるだろう。
多くの反対の声が上がっていることについて担当者にも尋ねてみたところ、次のような回答が得られた。

「背景には、2018年の種子法の廃止が象徴的に捉えられ、種子の管理から行政が手を引いて民間にあけわたすのではないかというストーリーが一部の人の間で広まってしまったことも影響していると考えられます。これに加えて、今回の種苗法改正についても誤解を助長するような声が散見されます。SNS等では、自分が知りたい情報ばかり入ってきて、反対情報が入ってきにくいことも無関係とはいえないと考えています」

現政権に対する不信感も、反対意見を増幅させる要因の1つだろう。法案は11月の臨時国会で成立する見通しとなっているが、今後の動向が見守られる。

[資料] 農林水産省資料「種苗制度をめぐる現状と課題〜種苗法改正法案の種子とその背景〜」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html

※この記事は「産直コペルvol.45(2021年1月号)」に掲載されたものです。

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。