直売所

【直売所に向けた野菜作り】農業の六次産業化(vol.4)

全国の地域おこしの先進事例が満載 ―産直コペルより―

直売所に向けた野菜作り 農業の六次産業化

販路開拓と売り先に合った商品づくり

前回までは農産物の生産品目や加工品の作り方などをお話ししてきました。

今回は一番大切な販路について、事例を交えながらお話ししましょう。

今まで農家は農業生産だけで、加工や販路については何もしてこなかったのが現実です。というよりは、そこの部分はやってはいけないに等しい暗黙のルールがありました。農産物は農協を通じ市場に出荷される系統共販が正しい流れであり、それ以外はヤミ売りのような言い方をされてきました。

需要が多く供給が少ない場合、農業は伸び、市場流通でも物が売れていく時代でした。ところが現在は食のグローバル化が進み、農産物は海外からいくらでも入る時代です。価格が安く安定供給が基本の加工業者にとっては、国産農産物では競争力がなく、必然的に海外物に移行していきます。

農業は世の中のグローバル化のスピードに完全に乗り遅れてしまった産業です。今さらと思いながらも、農業を盛り上げていかなければ日本の農業は終わってしまいそうです。

何とか気持ちのある農家は、伸びるためにいろいろと模索をし始めています。国も六次化に力を入れるべく、プランナーやサポーター、そして補助金など、いろいろな支援を始めてきていますが、まず自身で何を生産し、どのような加工品を作り、どこにいくらで売っていくのか(5W2H)、ここが商品づくりのポイントになります。

農産物や加工品は、その売り先によって向き不向きがあります。直売所向けであれば味噌やジャムもありかもしれませんが、それをそのまま別の売り先に持って行っても、場違いの商品になることが多いように思います。ナショナルブランドが並ぶ売場に自家製農産加工品では、気持ち的には勝てても、価格面、品質面でも太刀打ちすることは難しくなってしまいます。

私は自身の経験から、まずマルシェなどでテスト販売をすることをお勧めします。対面販売することで商品の説明ができること、そして消費者とのコミュニケーション能力の向上が図れます。

また、他の生産者から類似商品もかなり出てくるので、自身の商品との比較もできます。その中で何が売れるのか、どのくらいの内容量が適切なのか、デザインはどのような物がいいのか、どのようなお客様が購買層なのかを知ることができます。

私は幾つものマルシェの立ち上げに関わってきましたが、マルシェでも場所や土地柄などで、売れるもの、売れないものの差がはっきり出てきます。そのあたりを農家自身がまず経験することが重要なポイントになってきます。

六次化に向け、誰かの手助けを期待するのではなく、まず自身が販路開拓の行動を起こすことがもっとも大切なことです。

直売所では売れるお米が、都会のマルシェではほとんど売れない! なぜ売れないのか? それは都市生活者の食環境が分かっていないため、ミスマッチ商品を持ってきているからです。

東京では40%以上の方が一人暮らしです。そこに10キログラムの米袋を持ってきても誰も相手にしません。お米を売るなら1キログラム、500gの小袋にするか、試食を出し、注文を取って宅配をかけるような形がベストでしょう。そこにはいろいろな情報がつくわけですから、継続的購買会員の可能性も出てきます。

また、最近は料理をしない家庭も増えてきています。それは料理をしなくても食べられる物がいくらでもあるからです。農産物をそのまま売るのではなく、口の近くまで持っていって食べられる物に仕上げていくのも一つの方法です。お米ではなく、そこに少し手間もかけることによって、より付加価値のつくお餅などもいいように思います。

有機栽培や合鴨農法を謳っても、そうは売れる物ではありません。それでお米の味が変わることはまずありません。農家自身がその言葉に勝手に酔いしれ、消費者ニーズと思い込んでいるところが問題です。自分の農産物や商品を冷静に見られる目が大切な要因になります。

私は毎週末、都内のマルシェに出店しています。マルシェを始めて3年間、ほとんど参加してきましたが、その場所で売れるもの、売れない物が段々分かってきました。野菜だけの販売では交通費や出店料を賄うことはできません。やはり決まったブースのスペースで売り上げを上げるには、単価の高い商品が必要になってきます。

ジャムやジュースだけでは、とてもその商品にはなりません。一日出店して500円のジャムが5本売れても、とても採算が合いません。売上もさることながら、素朴さや手作り感、おしゃれ感も出し、ナショナルブランドとの違いをはっきりさせていくことも必要な要素になります。

自身の栽培している農作物で特徴のある加工品を作れるセンスを磨くためにも、マルシェへの参加は不可欠ではないでしょうか。

都内マルシェの場合、お客様の中にはシェフや量販店のバイヤー、通販会社の方など、いろいろな業種の方々も来られます。目をひく商品を出していれば、必ず取引の話につながっていくはずです。

私はほとんど営業をしたことがありませんが、たまたまマルシェの横を通ったDEAN&DELUCAのバイヤーの目にうちの商品が留まり、そこから商品の納品が始まりました。女性に人気のクオリティーの高いお店に出す商品ですから、加工の方にも気を遣いました。

加工場の整備や加工機械の導入など、売るためのハードにも投資をしましたが、おかげで売り上げも順調に伸び、次の商品の導入も決まっています。

次に、大阪の大丸百貨店内にオープンしたDEAN&DELUCAにリッツ・カールトン大阪の支配人とマネージャーが出掛け、そこでうちの商品を見て電話をいただきました。ぜひホテルのグルメショップで扱わせてほしいとのことから、早々に取引が始まりました。

商品力さえあれば商品が営業をしてくれる! そんな気がします。

スーパーなどの量販店は物量を扱うことでメリットが出ますが、それだけに納品価格もかなり厳しく、農家が直接取引をするにはちょっとリスクが高いように感じます。量販店の前に、直売所やマルシェで農産物や加工品のクオリティーを上げる訓練が大切でしょう。

クライアントに興味を示していただくには、今までにない商品を作ることが一番です。新しい加工品を作るには、新しい農産物にも挑戦していくことが不可欠ではないでしょうか。

文・有限会社コスモファーム 代表取締役 中村 敏樹

長野県上田市の水稲・養蚕農家に生まれ、香川県大学農学部卒業後、農産物生産指導、流通コーディネートなどを30年以上手がける。

(平成26年3月13日 産直コペルVol.4より)