新型コロナウイルスは依然として猛威を振るっている。
本誌前号の特集では、農林水産物直売所は、コロナ禍でも地域の食と農の拠点としてしっかり役割を果たしていることを浮き彫りにした。
それに引き続いて、本号では、コロナ襲来以前に大きな人気を獲得していたもぎ取り体験などの観光農業や、農作業の喜びを味わう体験型農業などが、どのような影響を受けているかに焦点を当てた。
結論から言えば、立地によって程度の差はあるとはいえ、総じて大幅な客数減に見舞われ、経営上も大きな打撃を被っている。そしてその中で、短期的には、収益の減額を最低限に押しとどめ、事業継続のための資金の獲得を目指して、様々な創意工夫を凝らしている姿が浮かび上がった。また、長期的・本来的に、「体験型農業」の意味や可能性を深く考察し、新しい形を模索する姿も浮かび上がってきた。
コロナ禍に直面し、それまで日本全土に広がっていたインバウンドを牽引役とした一大観光ブームが途絶えている。県境を越える移動は自粛が呼びかけられ、都道府県内・地域内の直売所等の観光スポットを巡るマイクロツーリズムが広がりを見せてもいる。
では、感染拡大が減速し、幸いにも収まった後に、コロナ以前のあの観光ブームは果たして再来するのであろうか? 農業や農業体験を利用した〝観光〟の在り方は、どのように変化していくのだろうか?
農業に触れ合うことは、都会生活を続ける人々に大きな喜びと発見をもたらすことは既に多くの人々が指摘している。コロナ禍で、農に触れ合うことのできる暮らしへの憧れが強まっていることもたびたび指摘されている。コロナ禍で田舎暮らしができる地域への移住が一挙に増大していることにもそれは端的に示されている。
では、コロナ禍で高まるこうした〝農への希求〟を受け入れる「地方」「田舎」の側の受け入れ態勢は、何を目指し、どこを生まれ変わらせるべきなのか? 何を整備しなければならないのか?―様々な意見と実践例を列挙し、アフターコロナの新しい「体験型農業」の形を考える一助としたい。
(産直コペル編集長・毛賀澤明宏)
※この記事は「産直コペルvol.48(2021年7月号)」に掲載されたものです。