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特集 地域の直売所で頑張る新世代農家たち

農業人口の減少、農業従事者の高齢化が叫ばれて久しい。実際に地方では、耕作放棄地が増え続けている現状がある。では、新たな農業の担い手がいないのか、というと断じてそんなことはない。決して数は多くはないけれど、農家の2世、3世やIターンなどによる新規就農者が頑張っている。

しかし…である。さすがはコンピューター世代の若者たち。彼らは効率や利益率を求め、自らサイトを立ち上げたりマルシェに参加したりして直販していることも多く、彼らが生活する地域の要である直売所に出荷していないケースも目立つ。

でも一方で、これもまた決して多くはないけれど、直売所に卸し、消費者とのコミュニケーションを楽しみながら直売所を、そして地域を支える若者たちも実はいる。  そこで今号では、そんな若手農家にスポットを当てた。日本の農業の未来、地域の未来が決して暗くないことを実感していただきたい。

直売所を守る、地域を守る―新世代農家たち

「直売所の高齢化」とはどういう問題か?

農産物直売所が直面する最も喫緊の課題は何か?ーこの問いへの第1の答えは「直売所の高齢化」。全国どこに行っても同じだ。第2もおよそ決まっていて「販売する農産物の減少」。この「農産物不足」もその理由を問うと「農家の高齢化」を挙げる直売所がほとんどだ。これほどまでに、農産物直売所は今、「高齢化」の波に飲み込まれようとしている。

農産物直売所は、元号が昭和が平成に変わった頃に全国各地で産声を上げ、30余年の間に全国各地に広がった。現在では、その数は約2万4000店に及ぶ。その間に、創成期に直売所の中心を担った当時40代から50代の人々は、おのずと70代から80代に齢を重ねた。 人は誰でも歳をとる。このことは自然の摂理だ。しかし、それが「高齢化」と呼ばれ、社会の、あるいは直売所の、ある種のマイナス要因であるかのように言われるのは、創設世代が歳をとったからではなく、次を継ぐ、未来を担う若い世代が、そこに集まらなくなっているからだ。

調査により浮かび上がったこと

直売所の高齢化=次世代農家の増加の停滞・減少・払底の実情はどのようなものか?本特集の掲載にあたり長野県内の直売所に電話をしてみたところ、実に電話した店のほぼ半数で50代以下の出荷農家は0(ゼロ)。「若手と呼ばれる農家はここ20年近く入ってきていない」と答える直売所も少なくなかった。

もちろん若い農家が頑張って出荷し、直売所の屋台骨を支えている例もある。特に、平地で農業資源に恵まれている地域では、若手の大型農家が、自分の名を売り・ブランド力を高めるために、重要な販売チャンネルの一つとして直売所を、熱心に出荷している姿も目に付いた。

求心力と遠心力 ー 分岐はどこに?

業界としては齢30年を経た農産物直売事業。農家の直接販売により、流通における中間マージンや運送費を軽減化し、消費者との直接的な情報・意見交換で農家の労働意欲を引き出したこの事業は、日本の農業にイノベーションを巻き起こした。当時の比較的若い農家の心を捉えたとも言える。

しかし30年後の今、「価格が安すぎて出荷する気にならない」「一生懸命栽培しても売れ残る」「ルールや決まりが窮屈で息が詰まる」…等とため息交じりで語る若者が増え、直売所の求心力は低下している。

30年の歴史の中から何を引き継ぎ、何を変えなければならないか? 全国の直売の現場から若者たちの声を集めた。

(産直新聞社 代表取締役兼編集長 毛賀澤明宏)

※この記事は「産直コペルvol.55(2022年9月号)」に掲載されたものです。