直売所

【論説】コロナ禍の 直売・産直が 直面する課題 〜各地の経営セミナー等の報告を兼ねて

新型コロナウイルス感染症の拡大が始まって1年余が過ぎた。この1年の間に、全国各地の直売所は今まで経験したことのない激震に見舞われている。しかし、その中でも、新鮮で安心な地域の農産物・加工品を消費者に届ける食品流通の一つの重要なチャンネルとして、その存在意義をますます高めている。

2020年末からの第三波の到来と、国及び地方自治体独自の緊急事態宣言の発出などによって、状況は予断を許さないものになってきているが、この難局を乗り越えていくためにも、この1年間の経験を整理しておくことが重要であろう。
本稿では、当社が各地の県や市町村と協力連携して行ってきた直売所経営セミナーや経営コンサルティングを通じて掌握してきたことがらを整理し、今後の全国直売事業の発展に向けた議論の素材として提供したい。(文・毛賀澤明宏)

感染拡大の中で浮かび上がる傾向

コロナ禍においても多くの参加者があった産直経営セミナーin岩手(2020年8月開催)コロナ禍においても多くの参加者があった産直経営セミナーin岩手(2020年8月開催)

当社は、「産直コペル」42号(2020年6月10日発行)に掲載した全国アンケート調査を皮切りに、岩手県での産直経営セミナー開催や、青森県・宮崎県で県の委託を受けて行った「新コロナ情勢での直売所の活動状況調査」などを通じて、コロナ禍の直売所への影響や直売所側の特徴的な動きなど調査集計してきた。各地の直売所や地域おこしの現場でのアドバイス・コンサルティングの活動を通じて見聞したことを含めて、コロナ禍の下で直売事業の現場で生起している動きは、表1のように整理できると思われる。

❶観光客需要が実質的に途絶する中で、地元客(車で片道30分~1時間程度を含め)の需要が確実に広がっている。そのような店は、売上げを確実に伸ばしている。

❷観光客需要を当て込んで運営していた直売所は事業のターゲットや様態を変える必要に迫られており、多くが、地域のモノを集めて他所に売る「地産他商」の地域商社的動きを強めている。

❸〝インバウンド・バブル〟とも言える形で拡大してきた観光産業は大きな節目を迎えている。一方で、コロナ禍の下「農ある暮らし」を求める都市住民の声は強まっており、これを「関係人口」の創出から、「援農」や「半農+半X」的な展開につなげる「新たな観光」のモデル創出が求められている。

これらの傾向は、実は、昨年5月連休の頃より顕在化してきていたが、その後半年余りの間にますます明確になってきている。

【表1】直売所への影響や動向の特徴点

1.観光客需要が途絶える中で、「地産地消」の拡大
・昨年同月実績を上回る店が続出している
・地域住民の支持の高まり、「巣ごもり消費」の拡大 
・トレーサビリティの明確な食材を求める志向の強まり

2.地域のモノを外に向けて売る「地産他商」のチャレンジ
・ふるさとBOX、ネット販売、加工事業者との提携
・地域のモノを地域の力で売る=地域商社的動き

3.ポスト・コロナ、V字回復は期待薄―新たな〝観光〟へ
・観光客対象事業、外食事業などの停滞
・他方で、都市部で高まる「農ある暮らし」希求の声
・「関係人口」から移住・定住につなげる新たな形へ

原点回帰―地域の良品を地域の消費者へ

こうした状況下で、直売所の今後の行く手を左右するものは、言うまでもなく、地域の新鮮で良質な農産物・加工品を、量も品目数も、より多く集めることのできる直売所の集荷力と出荷農家の生産力である。

コロナ禍における「巣ごもり消費」の拡大で生鮮3品など日常的な食料品を扱う業界は総じて売上げを伸ばしている。その中でも、「地産地消」の原点に基づき、地域の良品を地域の消費者に届けることに基軸を置いてきた直売所は、かなりの売上げ増を示している。「どこに感染源があるか分からない不安」は、「栽培した人」「作られた地域」「栽培や製造の仕方」が明示されている直売所への安心感と信頼感を呼び起こしている。

例えば、宮崎県綾町の「綾手づくりほんものセンター」には、有機無農薬・減農薬減化学肥料栽培の農産物を求める消費者が、地元綾町や周辺地域のみならず、自動車で片道40分程度かかる宮崎市内からも、週一程度で繰り返し訪ねてくる傾向が強まっているという。綾町が町を挙げて進めている環境循環型農業が信頼感を高めていると推測できる。
この綾町はまさに象徴的な例で、地場産の質の良い農産物・加工品を提供する直売所に今まで以上に消費者が集まる傾向は、全国各地で強まっている。
売上げ規模が小さな、いわゆる「おばちゃんたちの店」でも、品質や味の良い農産物を並べる店には客が集まり出している。また、観光需要を主要なターゲットにしてきたが故に、現在の〝観光客途絶〟状況でピンチに追いやられている道の駅併設の直売所でも、箱物土産品は昨年対比で半分以下だが、地元農産物は昨年実績越えを示している店が多数存在する。

社会に不安が広がる中で、まさに「地産地消」の原則が、その底力を発揮しているのである。先に述べた「地産他商」の地域商社や、「関係人口」作りを目指す新たな体験型農業などの動きにおいても、この「地産地消」の原則が不可欠であることは言うまでもない。

売り場と圃場の情報共有を新ステージへ

では、良質な地場産の農産物を量の面でも品目数の面でも豊富に集められるよう、直売所の集荷力と生産者の生産力をいかにして高めるのか?―この点が重要な問題となる。

当社は、ここ5年間ほど、この点に焦点を当て、主に、店と生産者の間で、売り場の販売情報と圃場の生産情報をデータ化して〝見える化〟し、共有する仕組みについて研究してきた。
コロナ禍においても、特に売上げを伸ばしている店と協力して調査研究を進めてきたが、重要なポイントは表2・表3にまとめた諸点である。基本的には、❶ポスレジから昨年の月毎・週毎の売上げ実績(総額・部門別・品目別)をデータで集計し、❷特にその品目を出荷した生産者を売上げ順に抽出する。❸そしてその生産者に同一品目の昨年以上の出荷を要請し、出荷できないことが予想される場合には、直ちに代替策を考える―という一連の流れになる。この時、要請の基になる実績データを生産者に提示し情報共有をすることが鍵を握るのである。

【表2】経営力・販売力強化のポイント

1.ポスレジシステムの普及の裏側で進む経営者・運営者・農家の経営や販売などに関する問題意識の希薄化
※できたものを出すだけの農家、出たものを並べておくだけの店員

2.誰の・何を・何時売るかの販売計画の立案と徹底。ポスレジデータの見える化と栽培出荷計画づくりへの利用

3.店頭販売情報と農家の栽培情報との相互共有
➡生産者の協働販売施設=直売所がもともと持っていた、共に作り・売り・学ぶ場という機能の、現在的な(IT化のもとでの)復活

【表3】ポスレジデータ活用に向けた着眼点

■販売額=売上げを伸ばすためには、
1.昨年実績を総額、品目別、生産者別に数値で掌握し、それと同額以上の売上げが見込めるように生産者に出品を要請する
2.ABC分析を行い、売り上げ構成の7.5~8割を占める売れ筋商品・店にとっての基本商品は、確実に昨年以上の出荷を促す
3.売上げ減、出荷減が出現している・あるいは予想される商品に対して対処策を考え、実施する
4.新たな売上げ増・顧客拡大が期待できる商品をつくり、チャレンジする

■同じことを集客・広報戦略の側からいえば、
1.例年の売れ筋・旬の食材をしっかりPRして、固定客+αをめざす
2.新規商品を開拓し、これまでの客でない未知の客を掘り起こす

こうしたことに意識的に取り組むことが、直売所の新たな一歩を切り拓くであろう。

この記事を書いた人
毛賀澤 明宏
産直コペル編集長 株式会社産直新聞社 代表取締役社長