直売所

【がんばれ直売所 伴走者からのエール】農家が元気じゃないと農機具屋はやってけん

株式会社マツシマの外観とトラクターなど農機具

このコーナーでは、直売所を支える他業種の方を中心に、専門業者としてのアドバイスや直売所への思い、
新しい視点からの提案などを自由に綴ってもらいます。

農家が元気じゃないと農機具屋はやってけん

寄稿:株式会社マツシマ 代表取締役社長 小林 誠

長野県箕輪町松島にある株式会社マツシマは終戦の翌年、昭和21年に創業しました。農業が馬や牛による畜力から農業機械に移り変わる過渡期を共にしてきた職人たちのノウハウが詰まった会社です。弊社は農機具屋としてスタートし、時代の流れとともに変わる農家の困りごとに応えているうちに、リフォームや設備工事にも携わる様になり、現在では多角的な事業を展開しています。私たちの気持ちはいつの時代も地域の困りごとを解決する「農機具屋」です。農機具屋として地域の農家を支え続けていきたいと思っています。

二極化する農業

長野県箕輪町の農機具屋、株式会社マツシマ長野県箕輪町の農機具屋、株式会社マツシマ

農機具屋として農業を見ていると、今後の農業は大規模農業と家庭菜園のような小規模農業に二極化していくのを感じます。大型と小型で農機具を求める方の要望が分かれてきているからです。高齢を理由とした離農者が増え、営農組合や農業法人など大規模な耕作ができる人の元にどんどん農地が集まっています。その農地を管理する人たちからは作業効率を高める為により大きなサイズの機械や、高馬力の農業機械が求められています。

その一方で、家庭菜園を耕す人は、小型の農機具や手頃な価格のものを求めます。兼業農家など中規模農家が使っていたようなサイズの農機具は売りに出されることも増え、農機具の中古市場はここ数年でかなり大きくなりました。中古業者によっては本格的な整備までは扱わないことも多いので、そういった修理の依頼も増えています。

そんな農業の傾向を考えると、今後、直売所出荷者は家庭菜園から出荷する人が増えていくのかもしれません。管理する面積が限られ細かく手が入れられる分、多品種の栽培が比較的しやすくなります。そういった方に直売所から新しい品種の提案等をして、売り場に並ぶ品物の種類が増えていくと、私のように直売所で珍しい作物に興味を持つ人も多いので、行って楽しい売り場になっていくだろうと思います。

直売所が主体となって農業塾や、栽培講習を行っている例も聞きます。そうした直売所と協力して農機具に親しんでもらうことができたらとも思っています。元々農家ではない方は、はじめはホームセンターで手頃な農機具を購入する人が多いと思います。農機具は機械にかかる負荷が大きいこともあり、定期的な整備やメンテナンスが必要になってきます。農機具を大切に長く使う上で、農機具屋と農家は切っても切り離せない関係です。家庭菜園の人たちも農機具屋を身近に感じてもらえたらと思います。

農機具で作業に選択肢を

株式会社マツシマの外観とトラクターなど農機具会社には農機具が並ぶ

現在の農業は70代以上の人が支えていて50代や60代の専業従事者は少ない。私たちが普段から関わっている農家さんも例外ではありません。おそらく、50〜60代の人にとっての農業は、親世代が行っていた、手作業が多く、家族総出で行い、儲けが少ない「農業は大変」という印象なのではないでしょうか。子どもの頃に手伝わされた記憶から嫌なイメージを持っている方もいるかもしれません。現役の親世代が「農業は大変」だから継がせたくないと思っていることもあるかもしれません。

今、30代の自分の息子たちを見ていると「農業は大変」という先入観がないからか、趣味の一環として農作業を楽しんでいるのを感じます。趣味の延長だったとしても農業に携わる人が増えていけばいいと思います。農機具は、家庭菜園の人にとってハードルの高いものかもしれませんが、機械を使うことで時間の短縮や、体への負担の軽減など、自分が求めるものの選択肢を増やすことができます。手作業だけでやってもいいし、作業によっては機械に頼って早く終わらせてもいい。農機具を取り入れることで農業へのハードルの高さは圧倒的に低くなっていくと思います。

農家さんが元気でいるために

農家さんに農機具の使い方を説明するスタッフ農家さんに農機具の使い方を説明

当たり前ですが農家さんが元気じゃないと、私たち農機具屋もやっていけません。現在の農業は肥料や農薬、農機具のメンテナンスなど、出荷までにかかる様々な費用に対して実入りが比較的少ない現状があります。「食糧」は生活する上で必要不可欠。時代によって形を変えたとしても農業がなくなることはないと思います。そんな中、少しでも地域の農産物の価値を上げ、農家さんが継続して耕作に取り組む為の一助になれないかと考えています。

今、試行錯誤している段階なのが、都市部の下町商店街で農産物や加工品を扱ってもらえないかということです。そうした商店街では八百屋が減少傾向にあります。地域に密着した場所の一角を活用してこちらの生産品を置いて頂き、一部はその場で可能な範囲で加工して販売もして貰えたらと考えています。

実際に野菜、果物、加工品を自分達のお客様から募って、短期的に東京都の下町の商店街で販売してみました。長野県ならではのりんごジュースやはちみつがとても好評で、地元で販売するよりも付加価値を足して販売することができたと感じます。地元では当たり前で目に止まりにくい商品が、場所が違えば価値あるものになるのだと実感しました。

コロナ禍で、この計画も当初予定していたようには進んでいませんが、輸送方法として地元バス会社とのタイアップなども検討しながら独自の流通を作っていきたいと考えています。我々のような古くからの農機具屋は、地域の方の生産品や特色を把握しているからこそ、出来る事があると考えています。農家さんがこれからも元気でいてくれるために、直売所とも協力しつつ色々な方法を考えていきたいと思っています。

※この記事は「産直コペルvol.49(2021年9月号)」に掲載されたものです。

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。