直売所

【号外 青森版 さんちょく新聞】「出荷者の高齢化」「産直運営の後継者不足」を克服する為に

 コロナ禍での各直売所の売り上げをみていくと、「地場産の食材があるのか」が、コロナで売れたところ、売れなかったところの分かれたポイントでした。しかし、「売るものが足りない」ということはコロナ禍以前から産地直売所が抱えている大きな問題で、実際は午前中で地場産のものが売り切れてしまうというところがほとんどです。出荷する力がなくなっているということです。

(2021年青森県産直活性化チャレンジ促進研修会、産直新聞社 毛賀澤明宏講演内容)

生産者の高齢化によって生じる問題

鯵ヶ沢・海の駅わんどで出荷していた84歳の生産者さん。「色んな種類を出荷しているよ」

 全国各地の直売所で最大の問題が「高齢化」とされていますが、そもそも産地直売所の高齢化とは何なのでしょうか?高齢化しているのは誰なのか考えると、生産者、経営者、消費者の三者です。特に生産者が高齢化するといろいろな問題が噴出してきます。

 まず1つ目は生産の面で良質の農産物や加工食品の量が減少します。「HACCPの書類づくりが大変すぎて漬物など作れない」という人が続出したり、綺麗でおいしい野菜を何十年も作り続けていた生産者さんがやめると売り場でゴソッと野菜がなくなったりする。そういう現象が起こる。高齢化は生産力の低下に直結しているのです。

 2つ目は、荷造りや搬送の面でパッキングや出荷・搬送などが困難になるという点です。栽培することはできても荷造りや搬送などが出来ないということが起きている。これが品不足につながって行きます。

 3つ目は、栽培技術や加工技術などの地域の宝が次世代に伝承できなくなるという点です。

 4つ目は組合や出荷者協議会の活力が弱まり、直売所全体の結束力や行動力が減退することです。昔のように何かやろうと思っても自分では動けない、若い人に任せたくてもその若い人がいない。こうして直売所の力が弱まっていきます。

 5つ目はみな頑固(意固地?)になり、議論をしても人の意見を聞かなくて意見が噛み合わないことなどが起きてくる。こうなってくると、若い人はこの組合や出荷グループにはなかなか参加してこないでしょう。

◆経営者・運営者の高齢化で生じる問題

 では、生産者ではなく経営者・運営スタッフの高齢化によって生じる問題は何でしょうか?具体的には以下の5つが考えられます。

 1つ目は、ポスレジ等コンピュータシステムやインターネットなど最新の事務機器を使った効率化が進まない問題。2つ目は、イベントやセール等店舗運営に係る企画、アイデアが湧かず、マンネリ化するということ。3つ目は、経営運営業務の負担が大きく担いきれなくなること。4つ目は、同等の高齢の人しか知人がいなくなり、若い新しい人材を見つけられなくなること。そして5つ目は、直売所や加工所の立ち上げ以降の貴重な経験が継承できなくなることにより、既存の経営・運営体制が維持できなくなるということです。

 このほかにも消費者、つまりお客さんが高齢化していくと購買力が落ちるというような問題もあります。が、ここでは割愛します。

◆「高齢化」を言い訳にしないことが大切

長野県の山村でラー油づくりの共同作業をする高齢者の皆さん。楽しそうだ

 以上のように見てくると、「高齢化」は本当に直売所運営に様々な影響をもたらすことは確かです。しかし、解決しなければならないのは、生み出されている具体的な問題の方です。例えば「売るものが足りない」とか、「POSレジシステムを使いこなせない」とかいう具体的問題を解決することです。

 このような具体的な問題を解決するために対策をどう立てたか、またどう実行したか―こういうことを検証せずに、「高齢化したからしかたない」と「高齢化」を言い訳にしていたのでは本末転倒とは言えないでしょうか?

 そもそも人が年々歳をとるのは当たり前のことです。若手、次の担い手を仲間にできないから、直売所全体としての「高齢化」が生み出されるのです。だから、新しい仲間を増やすために何をしたか、また、どのような取り組みをしたらよいのかを考えなければならないはずなのに、「高齢化してそれができない」と言い出してしまったら、解決の糸口が見つかるはずがないのです。

◆商品揃えを豊かにするための集荷システムづくりについて

 以上述べたような視点に立って、現在、産地直売所にとって重要なテーマになっている農産物の集荷システムの構築について考えてみましょう。

 集荷システムの構築は、現在、直売所の取り組むテーマとしてポピュラーなものになっています。「高齢化して、栽培や収穫はできても、出荷搬送ができなくなった」という生産者は全国的に多く、この人たちの出荷物を集めるために「集荷」が必要だと考えられているからです。

先進事例も多くなってきています。集荷の基本構造は、売り場以外に集荷ポイントを設置し、出荷生産者ではない誰かが集荷して、売り場に運ぶという構造です。必要なら荷造りをしラベル貼付もする形もあります。

 先進事例を表にまとめたので、これを参考に、どういう体制を作れば良いかを具体的に考えてみて下さい。「集荷システムづくりに取り組んだが、うまくいかない」という直売所は多いですが、どこまでできていて、どこがうまくできないのか―ということを明示できないことがほとんどです。これはどういうシステムを作るかが具体的に定まっていないことに起因することが大半です。他所の事例も参考にしてそうした点を振り返ってみて下さい。

集荷システム先行事例①
集荷システム先行事例②

◆高齢化して出荷できないから店が商品不足になるのか?

八戸・八菜館の89歳の生産者さん。「漬物を出荷するのが生きがいなんだよ」と話す

 しかしここで「高齢化しているから出荷していないのだろうか?」という疑問を持つことも大切です。本当は「出荷しても売れないから出さない」のでは?あるいは「出荷しても、仕入れの商品とダブってしまい、結局売れないから出さない」のでは?あるいは「そもそも何を出したら多く売れるか分からないから出さない」のではないか?…この辺りを検証してみることが大切です。

 そして、まずは「売るもの・売りたいもの」を明確にして、生産者さんにお願いして作って出してもらう。そして、頼んで出してもらった以上は全て売り切るよう頑張らなければいけません。「出せば売れる」ようになれば、出してくれるはずです。

 「何をいつ出したら売れるのか」を、生産者も直売所も把握していないと、生産者も「出さなくていい」となってしまいがちです。販売実績を明示し、何を作り・出荷して欲しいのかしっかり要請して、店と生産者との信頼感を取り戻さないと、ただ「集荷システム」を作っても機能しないと思います。

◆ベテラン高齢農家が活躍する場所を用意する

 2つ目に考えなければいけないことは、高齢者活用、後継者育成の方法です。高齢者の「積極的活用」の先行事例として、POP作成教室などを開催し、POP作りで高齢の生産者の個性と力を引き出すという方法があります。ベテランであることを強調し、「92歳=最高齢みよちゃんの棚」などと銘打った専門の売り場をつくり店舗のブランドとしてベテランの人を売り出すことも良い方法です。

 また、生産者のベテランメンバーに農作業の講師をやってもらうのも良いでしょう。高齢の方もやる気になるし、何より高い技術の継承にも繋がっていきます。長野県伊那市の山間部である長谷の地域では、高齢者が中学生に協力して唐辛子を育て、それでラー油を作っています。地元の直売所の一番の売れ筋商品になっています。高齢者の方達の生きがい対策にもなっています。

 「高齢化が問題」と言っていますが、「高齢化」はマイナスなことばかりでなく、高齢者パワーを発揮してもらって、店の看板商品づくりなどの先頭に立ってもらうこともできる│というポジティブ思考も重要です。

高齢者「活用」のアイデア集

◆後継者育成の具体的な取り組みを重ねることが大切

農業体験から農業の楽しさを知り、農業に関わり始める人は多い

 後継者育成の取り組みの先行事例を紹介します。愛知県豊田市では、トヨタ自動車の定年退職者を生産者として育成しています。農業学校に入校してもらい、野菜作りなどを学んでもらう。元々トヨタ自動車勤めで、PDCAやIT技術も身についているため、2年ぐらいで立派な農産物を栽培できる人に育っていくそうです。この定年就農希望者を対象にした農業学校の開催は、多品目少量生産の担い手作りに有効であるようです。

 また、山梨県甲府市風土記の丘農産物直売所では青年部が作付け実験を行い、成果を生産者総会で発表する取り組みを10年近く続けているそうです。作付け実験をした若手に、ベテランが質問をすることで、若手とベテランの溝が埋まることにつながっているそうです。

 滋賀県のおうみんちではJAの圃場で農業体験(青空フィットネスクラブ)が開催されています。参加費無料で300名以上が会員。作ったものはおすそ分け程度には持ち帰れるという大人気の体験型農場です。栽培された農産物の大半は直売所で品不足対策として販売されるというよく考えられた取り組みです。

若手・新規就農者のアイデア集

◆産地直売所の運営母体の再編に向けて

 今後、産直・直売所の経営事業体を強化していくためには、課題として産直・直売所を経営・運営する事業体を抜本的に再編強化する必要があります。問題点は、利益第一主義に飲み込まれないように、産直・直売所の本来の意義を確認していくことがあげられます。データ等を活用して、店の販売情報を生産者に伝え、作ってもらいたいものを作ってもらう体制を強化することが今後の産直・直売所の経営には求められています。

(2022年3月発行 号外 青森版 さんちょく新聞記載)

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。