あいきびと 代表 安藤あかり
長野県南佐久郡北相木村で、村内外の交流を促して地域の活性化を目指す団体「あいきびと」。その代表を務める同村出身の安藤あかりさんは、札幌と北相木村を行き来しながら、仲間とともにあいきびとの活動に取り組んでいる。そんな安藤さんが、活動を通じて感じ考え、実践している“新しいかたちの地域づくり”について伝える新連載。第1回は、あいきびととは、いったいどういったもので、何を目指しているのかを紹介する。(編集部)
人口600人の村に、全国から若者が集まる

私が生まれ育ったのは長野県南佐久郡北相木村。この山奥にある人口600人あまりの小さな集落に、年間9回ほど、全国から多くの若者が集まってくる。その目的は、地域に触れて楽しむ合宿に参加することだ。
普段関わりのない農村という異空間で、知らない人とともに料理をし、伝統文化に触れ、地域のおじいちゃんに山を案内してもらい、野菜をもらい、たまに狩猟でとれた鹿肉をいただく――こうした体験は、訪れる彼らにとっては、まさに〝異文化越境体験〟と言えるもの。参加者からは「自分を見つめなおせた」、「忙しい日々で疲れていた心が元気になった」といった声が聞かれる。

一方、地域にとっても賑わいづくりに繋がっている。担い手が不足している伝統行事などを一緒に手伝ってもらったり、子どもと遊んでもらうことで普段負担になっている休日の児童館のような役割を果たしてもらったり。子どもにとっても、普段は関わることができないお兄さんお姉さんと遊べる楽しい時間になる。
こんな時間と空間を作っているのが、私が代表をしている団体「あいきびと」である。設立のきっかけは、2021年に大学の実習で、若い世代のなかでも「農村地域の暮らし」や「自然体験」に興味を持つ人がいると知ったことだった。それで、小学校の山村留学の同級生だった浅野(現共同代表)と大学の友人5人を誘い、北相木村で子どもを対象とした野外教育を行うボランティアを始めた。
その活動は現在は活動内容を変更しているが、ボランティアメンバーの大学生自体が、野外教育の準備や北相木村での宿泊などの時間をとても楽しんでいたことから、「それならば大学生向けの合宿をしよう」と考え、地域と深く関わる時間を増やしていき、現在のあいきびとの活動形態に至った。
いまや、全国から大学生を中心とした多くの若者が合宿で北相木村に集まってくるようになり、様々な体験を行っている。例えば、地域の小学生向けのイベントの企画運営や、あいきびとの持つ畑での農作業、伝統行事の準備などの担い手、田んぼスケートリンクの整備とスケート体験、地域の人から伝統食を教えてもらい一緒に料理して食べるなど。〝楽しみ半分、貢献半分〟といったかたちで活動している。
重荷になりがちな作業が”面白い”に変換

あいきびとの活動は、〝遊びと体験とボランティアと仕事の中間のような活動〟と言えるものだが、こうした活動を通じて若者が地域に関わることで様々な効果を生み出している。
興味深いのが、重荷になりがちな作業が「面白い」に変換されることである。地域との関わりの中で、印象的だった出来事がある。田んぼスケートリンクの整備が追いついていない状態で、そのあとに私たちもスケートリンクを滑らせてもらおうと参加者と地域の方で整備した。田んぼリンクをいい状態に保つために声を掛け合い、皆で協力して成し遂げ、驚くほど状態が改善した。村内の少人数の有志だけだと大変な作業だが、地域外の人も交えて大人数で行うと、盛り上がってコミュニケーションが生まれ、未来のポジティブな話をできる面白い場になった。
あいきびとの合宿を重ねていくうちに、参加者の中にはイベントがなくとも個人的に村を訪れ、拠点である家に宿泊しながら地域の子どもと遊んだり、畑の手伝いをしたりする人も出てきた。そのような人が移住してくれればいいなと思いつつも、それをまだ真剣には勧められない。「住むこと」と「働くこと」に関して、未だ受け入れ態勢は整っていないからだ。それでも参加者と村の方とともに、柔軟性とクリエイティビティを持って、「未完」なものを楽しみ、改善していくカルチャーをつくりながら新たな事業にも取り組んでいく予定である。

いまや、あいきびとをきっかけに村を訪れた若者は延べ60人を超えた。この地域にしかない自然と生きる知恵、そして訪れる若者のポテンシャルを最大限に発揮するための存在を目指して、活動を更新し続けたいと思う。
筆者紹介

安藤あかり
あいきびと代表。2000年生まれ。長野県北相木村出身。北海道大学農学部在学中に日本全国海外を巡り地域づくりの現場を見る。2021年から長野県で学生×過疎地域に着目し、合宿イベントを多数開催。長野県での活動を継続しながら北海道に戻り、主に学生の起業家教育に携わる。現在北海道と長野県で学生と地域とスモールビジネスをキーワードに一人ひとりが主役になる地域社会を生み出せないか模索中。趣味はロードバイクと料理。

