直売所

【直売所訪問記】街なか産直 新鮮館おおまち

夏の売れ筋商品、「菜の花コーン」を手に梁川店長

岩手県の最南端に位置する一関市。東北新幹線・東北本線の駅から歩いて7分、レトロ感あふれる商店街のアーケードの下、パチンコ店と軒を並べて産直がある。他にはあまり見かけたことがないロケーションだ。(※北東北3県では「直売所」のことを「産直」と呼ぶのが一般的だ)

全国各地で街の商店街を「シャッター街」化の波が襲っている。一関市もご多分に漏れず、中心市街地の空洞化が著しい。ここににぎわいを作り、人々の笑顔を取り戻して、地域を活性化させよう―そんな思いを持つ商店街の人々が出資してまちづくり会社を作ったのが2005年。その取り組みの核として、「街なか産直新鮮館おおまち」を開設した。 以後15年―同店の課題は何か?運営会社である一関まちづくり株式会社の専務取締役で、同店店長を兼任する梁川真一さんに話を聞いた。(文・毛賀澤明宏)

デリバリー&集荷・ネット通販……

「まちづくり会社という名前でやっている以上、産直だけでなく商店街全体を活性化させないといけないと思っています」と梁川さんは語り始めた。「コロナに見舞われて、ただでさえ前のめりだったのが、ますます前のめりになってきている感じです」と笑う。

広い店内。加工品などの棚も充実している

例えば、今まさに着手しているデリバリー&集荷の仕組みづくり。新型コロナウイルスの影響で客足が遠のいた商店街の飲食店がベースになり、タクシー事業者と連携したデリバリー事業が構想されてきた。飲食店の料理をタクシー業者が運ぶ、今日版の出前業務だ。市街地を中心にして半径3キロ程度、運賃は200~300円程度だという。

 梁川さんらは、この出前の〝帰り便〟に目をつけ、それを使って農産物・加工品を周辺農村部から市街地にある同産直に〝集荷〟する仕組みを創り出そうとしている。

 この集荷便を利用したいと手を挙げているのは、15年前に同産直がオープンした当時からの出荷者で、「農産物をつくることはできるが店まで持っていけない」と言っている高齢者。一方、同産直に出荷し始めてまだ期間が短かったり、あるいはこれから出荷することを考えていたりするような若手の大型農家も、「取りに来てくれるなら出荷する」と歓迎しているという。商店街の仲間の力を借りて、専用アプリも開発・調整中だ。

もう一つ、コロナ禍に見舞われる中で「前のめり」で進めているのは、インターネット通販。同店のホームページ(https://ikiikishinsenkan.ocnk.net/)を開けばすぐに分かるが、旬の野菜や、一関特産の加工品など、主にセットになった商品を次々と世に出し、インターネットを通じて販売数を上げている。

これも夏の売れ筋商品、トマト。午後2時過ぎの取材だったので商品が少なくなっている

データは売り場と農家をつなぐツール

右のような新たなチャレンジができるのは、これまでの15年を通じて街なか産直新鮮館おおまちの店舗での販売がある程度安定してきているからこそである。

昨年の年間売り上げは、1億6千400万円。今年は上乗せ400万円が目標で、近年中には2億円を目指しているという。出荷者は400人で、うち農家は300人。

菜の花を育てそれをすき込んだ圃場で育てるトウモロコシ=「菜の花コーン」。定評のあるトマト・ピーマン・キュウリ・冬の曲がりネギなどが売れ筋商品。駅周辺の市街地を中心に地元の消費者が主なターゲットだ。

地元産の菜種粕と豚糞、籾殻を混ぜた特別堆肥を使用し、栽培されたとうもろこし。出荷生産者は30代

売り場は賑やかで活気がある。そのカギは、生産者に対しても販売スタッフに対しても、売り上げ状況をコンスタントにフィードバックすることだという。

「何が、どのタイミングで、いくつ、いくらで売れるのかをつかみ、何をいつ出荷して欲しいかを具体的に提示すれば、農家のためになる。これが販売スタッフの重要な役割。同じように販売状況をつかみ、消費者のニーズに応えるものを出せば売れる。これが農家の楽しみになる」が持論だ。この時に数字を示したりグラフを提示できれば説得力が上がる。「データはツールなんです」という。

トマトも主力の出荷生産者は30代が多いという

街づくりの核としての産直

梁川さんは一関市出身。学校卒業後、外資系のシュルンベルジェという石油関係会社に勤務。油井の掘削時に使う検査機の製造に関わっていた。2014年にUターンして職を探すうちに縁あって現在の会社に入社した。

「産直の店は課題だらけ。ソフト・ハード共に出来上がったものは何もなかった。社長ですら店に対する愛着が感じられないほど。これを変えるのは楽しかったですね。いろいろ挑戦し、成功体験を作り、それを糧にぐっと変わってくることができた。それが街づくりに直結していたから本当に面白かったですね」と振り返る。

産直の運営にとっては、比較的若い大規模生産農家が出荷してくれるようになったことが発展のカギだったという。梁川さん自身が、青年会議所(JC)や、農業青年クラブ(4Hクラブ)の役員として活躍してきたことも役に立った。 「商店街とタイアップして街の活性化を図る、特に子供連れのお母さんに土日に足を運んでもらえる店にすることが大切でしょうね。今後、全国的に産直・直売所は淘汰されていく大変な時代になっていくと思いますが、産直同士で手を取り合って、スーパーや量販店に負けずに頑張っていきましょう」と最後を締めくくった。

※この記事は「産直コペルvol.43(2020年9月号)」に掲載されたものです。

街なか産直新鮮館おおまち

住所:岩手県一関市大町4-29 なのはなプラザ1F
TEL : 0191-31-2201

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。