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【特集 直売所の平成を振り返る】自然災害×直売所

 東日本大震災、平成29年7月九州北部豪雨など、大きな災害が各地で起きた平成という時代。その中で浮き彫りになったのが、農産物直売所の「防災拠点」としての機能だ。直売所は比較的広いスペースを確保できる上、市場流通に依拠しない食品を販売するルートを持っている。緊急避難場所や情報の発信基地として、復旧・復興支援の拠点として、重要な役割を担った。

 それだけではない。時間の経過とともに、被災地の農業、生産者の心の復興を後押しする存在としても機能した。泥を被りながらもいつも通りに実を付ける果樹、被災を免れた田で実る稲穂―、被災地では「農産物が心の大きな支えになった」といった声も聞く。しかし売る場所が無ければ収穫してもただ捨ててしまうことになる。そうした時、直売所という「販売場所」が早期に復旧したことで、未来に希望を見出せた生産者も多かったそうだ。「何とかして店を開けよう」と復旧を急ぎ、被災からわずか数日後に営業再開を果たした直売所もある。中山間地域では、直売所を主な販路とする小規模農家も多い。もし直売所の復旧が遅れ、災害を機に生産者の多くが「離農」という選択をせざるを得なくなれば、地域農業の復興がさらに困難になってしまうことも考えられた。生産意欲を取り戻し、地域農業を維持していくために、直売所は重要な役割を担ったのだ。

 独自のネットワークで支援の輪が広がったことも、直売所ならではの動きだった。支援物資の提供だけでなく、「売ること」で被災地を支援しようと、つながりのある直売所が売り場を確保したり、商品を販売したりする取り組みも見られた。

 ハード面での機能強化だけでなく、今後は自助努力に頼らない仕組みの構築が求められるだろう。災害を経験した直売所の声から、その機能について改めて考えてみて欲しい。

※この記事は、『産直コペル』Vol.35(2019年5月号)の特集に掲載したものです。

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産直コペル 編集部
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