地域づくり

【道草雑記】農ある暮らしのすすめ

道草雑記アイキャッチ画像

2020年の春、お花見をして、みんなで美味しいものを食べて、そんな日常が感染症対策で静かに止まった。それでも、畑では草の芽が躍り出し、次々咲く花々に励まされるようにいつもの時間が動き出した。農園の作業が始まり、通りかかったご近所さんと挨拶を交わす小さな道草交流に、ほっと心が和む。
この道草雑記では、農業や林業に関わる様々な挑戦の記録をまとめている。今回は「農ある暮らしのすすめ」、地域で動き出した小さな農地を活かす取り組みを報告する。

今、信州伊那谷では、あちこちで小さな農業がスタートしている。伊那市長谷では、地域に帰ってきた若者が遊休農地を活用して、農家さんから農業を学ぶ「長谷さんさん農園」をスタートさせ今年3年目を迎える。信州大学農学部では、学生たちが農地を借りて共同農園をはじめ、農家さんを先生に部活ならぬ農活をはじめているらしい。かくいう我が家のご近所は、菜園マイスターが勢ぞろい、栽培方法から作物の美味しい食べ方まで、知恵や採れたて食材が行きかう豊かな毎日が繰り広げられている。近年、地域の師匠に見守られてスタートした、伊那谷の山麓にある我が家の小さな農園の一年を少しご紹介したい。

寄稿:岩崎史

夏の伊那谷風景

【3月/土づくり】春の兆しに生き物たちが動き出す。冬を越した球根に追肥、一年お世話になる畑に堆肥や石灰を播き、耕す。

【4月/種まき】圃場計画に合わせ、肥料を播き、耕耘・整地。山菜、ブドウを移植。霜対策をして春野菜の種まき、ジャガイモ、ネギを定植。庭の花々が一斉に咲くなか、ベンチを作る!

【5月/芽吹き】作物も草も競うように伸び、草取りは先手必勝。ブドウの芽かきも!山菜や漬物をおやつに、ベンチで一休み。夏野菜の圃場準備、種まきと定植。

夏の伊那谷「うめ仕事」

【6月/草取り隊】牧場に羊を招待し、圃場周りの土手草をしっかり食べてもらう!麦やニンニクやタマネギ、菜花の種の収穫。大麦は麦茶に。夏野菜の誘因や芽かき、ブドウの房づくりやジベレリン処理。

【7月/収穫開始】草や病虫害対策は日々の観察と対策。野菜の種類が多彩に!梅仕事開始。ブドウの袋掛け。

【8月/夏本番】夏野菜収穫も法面の草刈も最盛期。梅の土用干し、夕顔かんぴょうづくり。夏の日差しは偉大!秋野菜の種まき。

秋の伊那谷ぶどうだな

【9月/最後の!】秋の収穫に備え、最後の草刈りに精を出す。羊は嫁入り!ブドウの収穫が始まる。夏野菜の種採りも忘れずに。

【10月/実りの秋】秋を満喫!サツマイモや長芋の収穫。来年にむけ花の球根、タマネギ、ニンニクの定植、麦の種まき。一年の豊作に感謝し、肥料(羊糞)を圃場に入れ耕す。

【11月/食の秋】柿や根菜で、干し柿や漬物を作る。焼き芋は絶品!豆の選別や片付け、ブドウの選定がスタート。小春日和の作業はほっと幸せ。

正月飾り

【12月/年越し準備】秋野菜を土中や室に保管、苗や樹木にワラを着せて、冬支度を万全に!竹や蔓を調達し、クリスマスや
お正月のお飾りつくり。収穫食材でおせち料理。

【1月/1年の計】1年を振り返り、新しい年の圃場計画「夢」を描く。

【2月/春に備える】「夢」を実現するために、師匠や仲間と相談、準備。英気を養う!

紹介したのはほんの一例。お米作り、味噌や醤油作りを暦に加えると、不思議なことに一年がきれいにつながっていく。昔から引き継がれてきた農ある暮らしは、人が自然に習いながら描いてきた壮大なパズルだと実感。小さな農園の「農ある暮らし」、挑戦の日々で失敗することも、師匠や仲間と過ごす優しい時間も、全てが最高に豊かな時間! おすすめせずにはいられない。

※この記事は「産直コペルvol.47(2021年5月号)」に掲載されたものです。

この記事を書いた人
岩崎 史
信州大学大学院総合理工学研究科山岳環境科学専攻 信州大学農学部時代に農村計画の視点から、伊那谷の小学校の通学路を研究。大学卒業後、農業高校の教員として信州伊那谷、木曽谷にて高校生や地元農家とともに地域の課題に向き合ってきた。