農林水産省の新たな地域食料産業育成施策「地域食農連携プロジェクト」(Local Food Project:略称LFP)が令和3(2021)年度よりスタートした。2000年代に始まった農商工連携の取り組みや、2010年代の農業の6次産業化の取り組みの成果を集約し、それをさらに高次なものに昇華させることを意図したものなのだという。
初年度は、農水省の下に事業全体を統括する中央事務局がおかれ、全国22の道府県が地方事務局を開設して、取り組みをスタートさせている。本誌を発行する株式会社産直新聞社も、長野県の委託を受け、長野県事務局の一端を担っている。
本特集では、LFPの目指すもの、実際の取り組み状況、今後の方向性などにスポットを当て、農水省本庁の担当者、中央事務局関係者、地方事務局とそこがハンドリングして進める各種プロジェクトの関係者などから話を聞いた。
このLFPでは、「社会的課題の解決と経済的利益の両立」が基本的理念・目標として掲げられている。これまでの地域食農連携の取り組みについて、新商品開発や販路形成などに関しては一定程度の前進をもたらしたとはいえ、地域の1次・2次・3次の産業の創発的で継続的な発展にはつながっていないと総括し、その克服の道を、個別事業体の経済的利益を一義的に追い求めるのではなく、地域の社会的課題についての認識の共有を重視し、地域の多様な担い手による創発的協働に求めていこうというのだ。
本誌は、この問題提起に賛同する。本誌がベースにする直売事業は、本来、直売所を地域づくりの核としてとらえ、それを単なるモノの売買の場所としてではなく、地域の人々の学びと共創のコミュニティとして創出することを目指してきた。まさに、農林水産物直売事業こそが、地域における「社会的課題解決と経済的利益の両立を目指す場」であるし、その現代的な飛躍が地域振興の次のステージを切り拓くものだと、常々考えてきたからである。
スタートしたLFPを、真に地域創造につなげていくために、本特集がお役に立てば幸いである。
(産直コペル編集長・毛賀澤明宏)
※この記事は「産直コペルvol.51(2022年1月号)」に掲載されたものです。