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【特集 新世代リーダーに聞く】座談会・私たちが変えたコト、変えていくコト

「道の駅しなの」 支配人 新井匠さん
「街なか産直 新鮮館おおまち」 店長 梁川真一さん
「道の駅かなん」 駅長 石原佑也さん

新世代リーダーが新しい感性で指揮を執る3店のリーダーがインターネットを介して参集。『産直コペル』50号にて、東京農工大学の野見山敏夫教授と本誌・毛賀澤が対談で紐解いた「直売所は転換期を迎えているのではないか?」というテーマについて語り合った。現場から見た直売所の今とは?(司会・毛賀澤明宏/まとめ・中村光宏)

売るモノがない、足りない

毛賀澤(以下、毛 ) 今日は3名の新世代リーダーにご参集いただき、「直売所は転換期を迎えているのではないか?」というテーマで、現場のお立場からお話を伺えればと思います。

 まずは、全国約70%の直売所が直面する「売るモノがない、もしくは足りない」ということについて。スーパーの産直コーナーなど色々な形で直売所が増えて、地場産食材が取り合いで昼までにほぼ売り切れちゃう。原因は、生産者の高齢化や減少、出荷依頼の弱さなど色々とあると思うんですがいかがでしょう?

新井(以下、新) 当店の出荷農家は今250人ぐらい。平均年齢は65歳を超えています。今もっとも動いてくれているのは、定年退職後に本格的に専業農家を始めた65~70歳の方々。こういうものが欲しいという要望にも応えてくれています。

石原(以下、石) 道の駅かなんの石原です。ウチは大阪南東部の河南町、ココって本当に大阪? って言われてしまうような田舎にあります(笑)。でも、金剛山という大阪最高峰の麓で、農業が地域産業としてしっかりと根付いている地域です。近年は河南町の隣の千早赤阪村に新規就農のイチゴ農家が増えまして、当店も販売拠点のひとつとして力を入れています。

新井 匠さん/1980年、長野県長野市生まれの41歳。販売業の営業や事務などを経て、2014年9月、道の駅しなのを運営する(有)信濃町ふるさと振興公社に入社。17年より道の駅しなのの支配人を務めている

毛 高齢化などの問題はどうですか?

石 生産者は今120名ぐらいで平均年齢は67~69歳。幸い今は70歳台の方々も精力的に出荷してくれていますが、5年先、10年先がどうなるかは課題です。そこで、私が駅長になってから、出資金などの持ち出しなしで新規就農者に出荷してもらえる枠組みを作りました。その甲斐あって、現在は20~40歳代の若い農家も出荷してくれています。

 今は、さらに増やすべく就農希望者に組合員の農家で研修してもらうことを計画中です。実際に畑も借りてもらって覚えたことを実践し、その作物を出荷してもらうというスキームです。

毛 その点、創業したという意味では梁川さんはやりやすいんじゃない?

梁川(以下、梁) 店は18年ですが、私はまだ8年目ですよ(笑)。当店はJR一ノ関駅から歩いて5分の商店街のど真ん中で、生産者は460です。地域の縛りがある近隣の道の駅と違って、ウチは一関市全域のみならず隣の宮城県気仙沼辺りも登録OKなんですよ。

毛 それでは品物がないなんてことはないですか?

梁 一関は雪の時期が長いし、苦労しないとは言いませんが、道の駅よりは多く集まるかなと感じています。また、私どもの地域でも高齢化などで生産者数が減ってはいますが、なんとか頑張って続けてもらえるよう、私たちもできる限りの協力をしています。ただ、冬場については「曲がりネギ」という特産品ができましたが、夏野菜はJAが力を入れるトマト、ナス、キュウリ、ピーマンばかりになっちゃうのが地域の課題ですね。

大阪府がイチゴの一大産地にするべくテコ入れしたこともあり、隣の千早赤阪村に新規就農のイチゴ農家が増えた。道の駅かなんも有力な販売拠点だ

毛 小誌51号の「くつろぎごはん」でお世話になったネギですね。

梁 実はもう一つ、「南部一郎カボチャ」という地物があるんですよ。糖度が高く、完熟させるとマンゴーくらいの甘さが出るんです。今は生産者が限られ、高齢化や後継者不足の問題もあるのですが、それを特産品にできないかと取り組んでいるところです。

毛 若い農家を増やすようなことは?

梁 今は生産者が出荷先を選ぶ時代だと思うので、まずはウチ自体が売れる店にならなきゃならないと考えています。具体的には、ふるさと納税の返礼品や通販、今年からはじめた定期便などで、農家が苦手とする販路開拓を提案できるようにするなどですかね。ベテランに対しても、例えば高齢化で持ち込めなくなった作物を私たちが集荷に回るなど、モチベーションを上げていただく努力はしています。

毛 実は本特集ではもう1店、宮崎県の「道の駅くしま」の駅長も取材しているのですが、同店は昨年4月開業と新しく、品物集めに相当ご苦労されていると聞いています。そこでひとつには、食品加工業者や料理屋さんと提携して、地元野菜や魚介の加工品をたくさん作り売場を充足させているそうです。そしてもうひとつ、次のテーマである手数料率、具体的には25%という思い切った高率を打ち出しています。

石原佑也さん/1980年大阪府河南町生まれの41歳。農事組合法人かなんが運営する「道の駅かなん」駅長。勤めていた町内のスポーツジムで初代駅長に声をかけられ、開設から2年後の2006年に入社。14年に駅長昇格。全国農産物直売ネットワークの幹事も務める

生産者総会で満場一致

毛 小誌50号では、東京農工大の野見山教授とともにこの問題にメスを入れ、「直売所の品物の価格は安過ぎるのではないか。再生産価格を守り、手数料率を改定しなければ生き残れないのではないか」という問題提起をしました。実際、今の価格設定かつ手数料15%では、新しい挑戦はできないと思うんです。

 道の駅くしまは手数料率25%。それも生産者総会の満場一致で決定したそうです。なぜ、そんなことができたのかというと、15%での利益構成を公開して「経営が成り立たず仕入れた野菜を売らざるを得ない。我々も最大限努力するから、地元農業のために応分の負担をしてください」と丁寧に説明したそうです。そうしたら、「わかった。25%で頑張ってくれ」となったそうです。

一同 25%は驚きの数字ですね。

毛 後日談もあって、手数料率が高いんだから、いいものを出さなくちゃという雰囲気になってきたというんですね。さらに、一生懸命売ってくれるという評判が広まって若い人が出荷してくれるようにもなったそうです。

梁川真一さん/1979年、岩手県一関市生まれの42歳。一関まちづくり株式会社 専務取締役兼「街なか産直 新鮮館おおまち」店長。電子機器メーカーや石油関係の外資系企業で生産技術や工程管理を担当し、2014年に新鮮館おおまちの店長として一関まちづくり(株)に入社した

石 反対はなかったんですか?

毛 満場一致とはいっても内心では反発している人もいると思うので、そのケアは必要と考えているそうです。「あんな高い手数料でやっていけるのか?」、「ほら、やっぱり野菜が足りないじゃないか」というような声も聞こえてくるようですが、地域にとって何が大切かを最重要視する串間市の若きリーダーたちの目的意識は揺るぎないもののように思います。

石 当店は組合員が13%なんですよ。法人設立の理由が地域活性化と農業者の生活向上なので、儲けるというより組合員に少しでも還元するという色が濃い。スタッフも増え、13%では本当に厳しくなっていますが、簡単に上げることができません。その代わりというか、今まで内税で、経費で補填してきたんですけど、4月1日から外税に変更する準備を進めています。

新 当店は信濃町の町内の方で15%です。公社なので地域の農業振興のためという考えが徹底されており、石原さんと同じで手数料を上げることは難しいと思います。実は最近、出荷協議会という生産者団体を立ち上げて、公社から協力金を出し、それを元手に一緒になってやっていくようになりました。手数料率の話はその後ですね。

梁 当店は4年ほど前に手数料率を2%上げました。今は平均17%で、役員はさらなる見直しを検討していますが、私はまずはご負担を納得してもらうためにも生産者に対するサービスを向上させるべきと考えています。それが手数料を上げるきっかけになるのではないでしょうか。

毛 農家に負担させるだけではなく、運営側も手数料にふさわしい内実に変わっていかなければならない。生産者が進んで協力してくれるよう改善に努める。そんな当たり前のことに、改めて気づかされました。

最後の売り先が直売所

新 当店の場合、農家が直売所に出荷する優先順位が低いように感じています。自分の顧客と手がたい農協がメインです。それが課題なのですが、皆さんのお店はいかがですか?

梁 一関ではJAへの出荷量が減ってきていると感じます。若い人だけでなくベテランも直売する人が増えているようです。八百屋さんが減ったので、市場への出荷量もかなり減っているのではないでしょうか。

毛 系統出荷よりも産直が多くなったってことですか?

梁 農家の話を聞く限り、特に若い人は産直で売る方が圧倒的に多くなってきていますね。今はインターネットで豊富な情報が手に入りますから、農家も色々な販売チャネルを研究し、自分で売った方がいいと判断したと思います。

石 ウチの地域では共選共販が減った結果、大型道の駅のJAの直売所が2軒できました(笑)。3軒は車で30分くらいなので、生産者はどこでも出せるんですね。だから、直売は明らかに増えていると言えます。各農家がSNSを使って直に販売したり、マルシェに出て販売するようなことも増えているようです。

梁川さんが店長を務める、「新鮮館おおまち」がある商店街で開催されるマルシェの模様。
お仕着せではないイベントの自由な様子や盛況ぶりが伺える

毛 系統農協の共選共販にまず出すという原則が各地で崩れ始めているというのは意外でした。小社のある長野県は、まだ共選共販からという雰囲気が強い気がしますが…。

新 そうですね。これは米農家が多い信濃町の気質かもしれませんが、米は共選にまとめて出すことが多いじゃないですか。産直に出すとなると、自分で選別して袋に詰めてという作業が付いてくる。やはり、それは農家にとっては結構な手間なんですよね。

毛 共選共販から離れて自分なりに売りたい物を売りたい形で売れる場所に出していくという農家が、高齢化が進む長野県では中で表面化または増加しているのでしょうか?

石 これまで市場出荷してきた中規模以上の農家が、高齢化で十分な量を栽培できなくなってきたのかもしれませんよ。仕方なく畑を分けて、小口栽培に切り替えたということもあるのではないでしょうか。で、売り先が直売所。もはや進化か退化かよく分かりませんが(笑)。

組織が硬直化している?

毛 今までにも出てきた直売所出荷には、若い農家にとって様々な高いハードルがあるのではないか—これが次のテーマです。出荷と残品整理に係わるルールのハードルの高さはあるでしょうが、運営組織が硬直化していて新しい考えを受け付けなかったり、情報が氾濫するこの時代に透明性がなく、どう運営され、生産者のベネフィットをどう考えているのかが分からないという話も耳にします。

 先ほどお話しした道の駅くしまの成功裏には、経営側の情報をすべて明かした上で、自分たちも生産者の意思や事情を共有し、一緒に盛り立てていくための議論を納得するまで繰り返したということもあると思われます。

梁 当店は、商店街の活性化を主目的に商店街や地域の代表が運営に携わっています。農家が携わらないので、変えなきゃという雰囲気はそもそもないかもしれない。古い縛りもないから、私もかなり自由にやらせてもらっています(笑)。

 ただ、改善したいと思うことはあります。もっと農家がやりたいことを当店で実現できるような流れにしたいと思っていますし、一部は既に始めています。

毛 初めて梁川さんのお店に行った時、お店そっちのけで生産者についてばかり話されるのに驚きました。直売所が大型化していくこの25年くらい、そういうコミュニケーションが軽んじられてきた。一方で規則でがんじがらめになって、決まり事で動かされる直売所みたいなイメージができてしまった。そういうところに閉塞感や閉鎖性がまん延してしまっているかなという気がするんですけど。

道の駅しなののお食事処「天望」が提供する季節限定「旬のソフトクリーム」。
イラストは長野美術専門学校とのコラボで誕生した道の駅しなのの応援キャラクター

梁 私は、平日の午前中はとにかく農家を回っています。農家の今の情報を集めながら、少しでも私の言うことを信頼してもらえるよう歩み寄っています。

毛 石原さんのお店はどうですか? 農家とのコミュニケーションについては、歴史と伝統の上に積み重ねられてきたと思うのですが。店によっては、生産者組織が硬直化していて新参者を受け付けないから嫌だというような話も聞きますけど。

石 伝統があるかどうかはわかりませんけど(笑)、梁川さんの話は羨ましい限りです。でも当店も、閉塞感はないと思いますね。先ほどお話しした通り若手も入ってきていますし、ベテランが威張るような空気もない。どちらかというと、若い人には「頑張ってくれよ」みたいな感じですよ。

 土日祝日の午前中だけですが、ウチは出荷者に販売応援をしていただいているんです。そこで敢えて若手とベテランに組んでもらい、お互いの人柄などを知ってもらうようにしています。

毛 石原さんは駅長になられて何年でしたっけ?

石 7年ぐらいです。伝統的な組合組織を継承した二代目です(笑)。

毛 やりにくいことが、たくさんあるのではありませんか?

石 そうですね…。変化しないといけないと思うんですが、それには弊害がありすぎてなかなか動けないのが悩みの種ではありますね。

新 当店も、閉鎖的ではないと思います。皆さんが出荷される開店前に、店先でよく生産者が井戸端会議をしているんです。そこにはベテランの方ばかりでなく若い農家も結構いて、色々と教えてもらっているようですよ。

毛 生産者が主体的に関わってくる―そこが直売所の良いところだから、そういう繋がりが希薄になるのは勿体ない。是非、大切にしてください。

SDGsへの取り組み

毛 最後に、もう少し先にある地域と直売所のあり方とかSDGsへの取り組みについて聞かせてください。

梁 私はSDGsでは「住み続けられる、まちづくり」を大切にしています。当店のある商店街には空き店舗が増えていますが、何とか活性化させるべく関係人口を構成する若い人たちにも商店街運営に携わってもらっています。商店街が勝手にイベントをやるのではなく、地域の人たちが企画するんです。いずれは産直の商品開発にも携わってもらいたいですね。

2016年に国土交通省より「重点 道の駅」に指定されている道の駅かなん。
2018年4月にリニューアルしている。土日は駐車場がいっぱいになる人気店だ

石 私は有機農業を広めたいんです。具体的には、これからはじめる方々、有機に切り替えたいと考えている農家へのサポートを通じて、町内に有機農業地帯を作れないかと考えているところです。

新 当店はエコファーマーを応援する有機コーナーを作っています。15時を過ぎたら、半額コーナーで売るようなことも始めました。地域のペンションや飲食店に買ってもらったり、併設のレストランでもそういう野菜を積極的に使うことでフードロスを最小限に抑えたい。現在は加工所の方で、もう少し上手にそういう野菜を使うことを検討中です。

毛 私は、農産物直売所はSDGsが目指すゴールを既に見せていると思うんです。環境保全については、皆さんが有機栽培ではないけれど減農薬だし、生産者でも売り場でも女性参画が進んでいるし、フードマイレージを低めようという発想も地産地消で実現している。直売所がやってきたことに、やっと世の中が追いついたという思いです。

 今日はとても意義のある話を伺えました。こういう集まりを是非また作りたいと思います。今日は、ありがとうございました!

※この記事は「産直コペルvol.52(2022年3月号)」に掲載されたものです。

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。