特集

【特集 LFP】エノキメニューの新定番を子どもたちに

長野県が生産量日本一を誇るエノキタケを材料とし、新しい食文化を創り出したい! 私たち産直新聞社がLFPながの事務局として支援に当たっているのは、キノコ生産者や食品加工メーカーなどが取り組む「エノキプロジェクト」だ。おいしくてヘルシーなエノキ入りの新メニューを開発して食卓の定番にしたいー生産者らの切なる願いを形にするため、皆で最初の一歩を踏み出そうとしている。(文・熊谷拓也)

エノキ入りのメンチカツでヘルシーさとおいしさを両立エノキ入りのメンチカツでヘルシーさとおいしさを両立

代替肉としての可能性

本プロジェクトの中心となっているのは、県内でエノキタケ生産をリードする長野県中野市の生産者たちだ。食材としての魅力を誰よりもよく知っている生産者の視点で、エノキ入りの新たな定番メニューを生み出そうとしている。

「エノキタケはうまみ成分が豊富で、かつ、歯ごたえもしっかりしているため、肉や魚と同じような、おいしさと力強さを兼ね備えています。肉の代わりにエノキタケを入れたメンチカツやハンバーグを作れば、低カロリー・糖質カットでありながら、うまみをしっかりと感じられるメニューになるんです」

こう語るのは、エノキ生産者の古屋健太さん(株式会社小池えのき代表)。キノコのことを知り尽くす「スペシャルきのこマイスター」の資格を持つ古屋さんは、有志メンバーと共に「あしたはキノコを食べようプロジェクト」を組織し、ご当地グルメの開発などを通じてキノコの食材としての魅力をアピールしてきた。ただ、消費者の反応は上々でも、鍋料理以外の定番メニューにハマらないのが課題。そんな折に出会ったのが、長野県農産物マーケティング室が担当する今回のLFP事業だった。

エノキタケは長野県が生産量日本一エノキタケは長野県が生産量日本一

今回のエノキプロジェクトは、狙いを子どもたちに定めている。学校給食で子どもたちに人気のメンチカツやハンバーグにエノキを入れて提供し、給食栄養士向けにエノキの機能性について周知する機会を設ける。おいしさだけでなく食育の観点からも、エノキの有用性を丁寧に伝えていく予定だ。

忘れてはならない「社会的課題の解決」の観点でも、エノキプロジェクトは大きな期待を背負っている。需要拡大による生産者の収入安定化も地域農業にとっては喫緊の社会的課題だが、それだけではない。将来的にはエノキを肉に替える割合を少しずつ高め、完全なる代替肉メニューを開発することを想定。畜産がもたらす環境負荷を軽減し、グローバルの食糧問題への切り札となる可能性を秘めている。

信州発のエノキプロジェクトで、「社会的課題解決と〝味覚的〟利益の両立」なるか。

エノキ生産者の古屋さんエノキ生産者の古屋さん

巻き込み続ける〝長野モデル〟

LFPながのでは、プラットフォームに集う52社のLFPパートナーから、継続的に新規プロジェクトの提案を募り、関心のあるメンバーが参加できる個別会合を随時開催している。オープンイノベーションの創発を喚起する、自称〝長野モデル〟について、事務局の立場で報告する。

エノキプロジェクトに続け!

LFPながのプラットフォーム

11月中旬、長野県伊那市内の会議室に、5人のLFPパートナーが集まった。同じ県内とはいえ、車で片道1時間半以上の時間をかけて参加してくださった方が2人。わざわざこの日のために、東京から駆けつけてくださった方もいた。

この日は「地場農産物の物流システム構築」をテーマに、あえて対面での話し合いの場を設定した。オンラインとのハイブリッド開催でZoom参加も3人。長野県小海町の直売所経営者である朝野正三さんが、有機野菜を巡る直売所間物流の実践例を紹介。運用方法やコストを巡り、悩んだり調整に苦労したりしたことを細部にわたって報告してくださった。

LFPながのではエノキプロジェクトと並行して、「LFPオールながのプラットフォーム定例会」と称して、オープン参加の会合をオンライン開催している。10、11月に2度開き、各回3人ずつプロジェクト案を発表してその場でマッチングを行ってきた。朝野さんも10月の会で農産物物流をテーマに発表した一人で、そこで興味を示したメンバーに声を掛けて上記の個別会合が実現した。

参加した物流関係者は「我々にできることはまだある」と応じ、メディア関係者は「物流大手とマスコミが抱える問題には共通点がありそうだ」と問題提起した。予定の1時間半が過ぎて会を閉じても、すぐに会場を後にする人はおらず、その場でしばらく本音の意見交換が続いた。事務局の私が「この会を開催して本当に良かった」と安堵した瞬間だった。

自社だけではなく、他社や異業種・異分野の技術やノウハウを組み合わせて、革新的なビジネスモデルを生み出すことを「オープンイノベーション」と呼ぶそうだが、この言葉は今回のLFP取材を通して、農水省担当者である松本秀明さんが使っていたものだ。「長野県の事例はまさにオープンイノベーションで、LFPが目指す理想的な形です」と、力強くエールを送ってくださった。エノキプロジェクトに続く新プロジェクトを創発すべく、事務局としてできる限りの支援をしたい。

この記事を書いた人
産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。